首長インタビュー第12弾は、宮城県七ヶ宿町の小関幸一町長。

1389人と、宮城県内で最も人口が少ない自治体でありながら、民間活力を積極的に導入し、移住促進施策や交流人口拡大に向けた取り組みに力を入れている七ヶ宿町。

詳しい政策や、その裏にある想いについてお話頂きました。

職員時代の経験が、町長へチャレンジするきっかけに

40年間、役場で職員として勤務していた小関町長。町長にチャレンジしたきっかけは、職員時代の経験にあったといいます。

「40年間働いてきて、自分の中で一区切りついたこともあり、早期退職したんです。

2年ほど経った時、住民の方々から『町政をやって欲しい』とお声がけいただきました。

職員時代、町長と議会の折り合いがつかなかったこともあって、ものごとを決めるのに時間がかかったり、スムーズに進まなかったりした経験があったんですね。

自分が町長になればそのようなこともなくなり、町政を安定させられるのではないかと思い、名乗りを上げました。

幸い、前町長や議会も応援・協力を申し出ていただいたこともあり、思い切った政策が出来る恵まれた環境の中で、町長に就任することが出来ました。」

 

民間活力との役割分担の元、人口減少克服に挑む

宮城県内で最も人口が少なく、高齢化率も最も高い自治体である七ヶ宿町。

少子高齢化のスピードを抑えるため、小関町長は若い世代や、子育て世代をターゲットとした移住促進施策を多数行っています。

「以前は、役場が移住促進施策を一貫して行っていましたが、ありきたりの取り組みばかりになってしまったり、柔軟性に欠けたりしている部分がありました。

そこで、役場の中にあった移住希望者向けの窓口や情報発信機能を、町も出資する民間企業『七ヶ宿くらし研究所』に委託することにしました。

こうしたことで、インターネットを活用する等して、移住希望者が気軽に相談したり、七ヶ宿に関する情報を得られたりする環境を整えることが出来ました。

これと同時に、七ヶ宿への移住に興味を持って頂いている方を対象に、田植えや稲刈り体験、ホタル観賞会、雪かき体験といったイベントにも力を入れています。

さらに、町への移住を決めてくれた方に対しては、『地域担い手づくり支援住宅』の提供を始めました。

これは七ヶ宿町に移住して家を建て、そこに20年間住んだら、その家と土地を無償で差し上げるというものです。

この制度は2016年度から開始しましたが、上述の情報発信とも相乗効果を生み、この制度を利用して、これまで計34名の方に移住していただき、8棟の家が建てられました。

 

長期的な目線での子育て支援施策

七ヶ宿町では、子育て支援にも力を入れています。

その1つが、「子育て応援支援金」の支給です。

「図のように、七ヶ宿町に在住1年以上の方に、子どもが生まれてから高校に入学するまでの15年間に渡って支給しています。

また、七ヶ宿町では18歳まで医療費を無料にしているのですが、町内にある、全寮制の西山学院高等学校の生徒さんにも適用しています。

全寮制の私立高校で、町内の子どもはあまりそこに通わず、むしろ全国から生徒が集まってくるような高校です。

『七ヶ宿町に税金を納付していない、3年経ったら町から出て行ってしまう子どもに、そこまでする必要は無いのではないか』という意見もありました。

しかし、この国の未来を担う若者は、自治体単位だけではなく、日本全体で支えなければなりません。

また、『七ヶ宿町から支援してもらったんだ』と感じてもらうことで、将来七ヶ宿町に恩返しをしたいと思ってほしい。

若者への投資は、長期的にですが、町にとってプラスになるのではないかと考えています。」

 

町の存続をかけた”人への投資”

小関町長が最も重視していることの一つに、将来を見据えた”人への投資”が挙げられます。

「私にとって最大の目標は、七ヶ宿町を存続させることです。

この目標を達成する上で、施設といったハードだけでなく、若者や、子ども、移住促進などの”人への投資”も重要だと考えています。

今住んでいる人たちに対する政策のみでは、あっという間に人口は1000人を割り、将来的に町政を維持できなくなってしまいます。

近い将来、人への投資が実を結び、『自分たちが今後の七ヶ宿町を作っていくんだ』というリーダーが出てきて欲しいと考えています。

年間で統計に変動はありますが、2019年4月31日時点のデータでは、七ヶ宿町の高齢化率は1%下がりました。

以前は年間2~3人のお子さんが産まれれば良い方だったのですが、2018年は8人のお子さんが産まれました。

今後も人への投資を継続することで、少しでも明るい未来を作ることが出来るのでは、と期待しています。」

交流人口拡大のための課題

七ヶ宿町では、移住促進と同時に、交流人口拡大に向けた取り組みも行っています。

『七ヶ宿ならではの魅力』を、もっと出していかなければいけないと思っています。

昨年、廃校をリノベーションした自然体験宿泊施設『街道Hostel おたて』をオープンしました。

まだ個人宿泊者の利用は多くありませんが、子供や社会人の合宿所として利用されることが多くなっています。

現在、地元のお母さん方に協力してもらい、郷土料理を提供するなどの工夫をしています。

合宿以外の目的の方にも魅力を感じてもらうためにも、七ヶ宿町に来ないと出来ない経験や食べられないもの、見られない景色といった要素を盛り込む必要があると考えています。

例えば、七ヶ宿ダムもその一つです。

七ヶ宿ダムも町の魅力になりえるのではと思い、見学会やダムのイルミネーション等を積極的に開催しています。

七ヶ宿ダムの見学に訪れる方は一定数いらっしゃるので、ダムに並ぶような魅力を作り、町を訪れるリピーターを作ることが、交流人口を増やすためのテーマだと思います。」

 

移住者や民間活力が集う町に

最後に、七ヶ宿町の今後の展望をお聞きしました。

全国から七ヶ宿町に人材が集まり、その方々に、地元の方も知らないような七ヶ宿の魅力を発見し、磨いていく。

そんな町を作っていきたいです。

そのために、移住者は未だ少数ですが、積極的に交流できる機会をつくるなどして、地元の方々がしっかりと受け入れられるような環境を整えていきたいです。

また、移住者の方々には、住民との交流も含めて七ヶ宿の魅力を感じていただき、それを外部に発信していただきたいと考えています。

最後に、行政だけが主導して町づくりをすすめるのではなくて、民間企業と協働し、互いに切磋琢磨しながら新たな事業が生まれるような町に出来ればと思います。」

若者世代や子どもにも目を向け、将来を見据えた取り組みを推進する小関町長。

真摯な町づくりは、きっと七ヶ宿町のファンが増えていくことにつながるのではないか、と感じました。

貴重なお話をありがとうございました!

 

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佐藤 桃子 MOMOKO SATO

東北大学経済学部在学中。
2018年2月にMAKOTOグループにインターンとして参画。地方自治体向け新規事業開発、広報等の業務に従事。

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