今回のインタビューは大衡村の萩原達雄(はぎわら・たつお)村長。

県内唯一の”村”にして、大規模な企業誘致を成功させた大衡村の村づくりについてお話し頂きました!

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菅野永  HISASHI KANNO

東北大学農学部卒。地方銀行、公務員を経てMAKOTOへ参画。二輪レースで大怪我をした経験から、「残りの人生かけて大きな挑戦がしたい」という思いが芽生え、ベンチャーの世界へ。福祉系ベンチャー企業への出向も経験し、会計・オペレーション改善・販売促進・組織構築など現場での幅広い経験を持つ。 2018年7月にMAKOTO グループ化に伴い、MAKOTO WILL代表取締役就任。

 

“ガラス張りの村政”を合言葉に村政の立て直しを図る

村長に就任以前、大衡村議会の議長を務めていた萩原村長。

2015年に、現職村長が不信任決議を経て辞職するという出来事が起こりました。

「当時私は議長だったものですから、このような切迫した状況の中で、周りの方々に推されて村長選に出馬したというのが正直なところです。

村長に就任後は、“ガラス張りの村政”を目指しました。

”ガラス張り”には、村民や世間に対してと、役場職員に対しての意味の2つがあります。

村民や世間に対しては、就任以前、大衡村は『不透明な村政執行ではないか』という指摘を受けることがあったという背景があります。

このような疑惑を払拭するために、透明性の高い村政運営を確立し、世間からの信頼を取り戻そうとしました。

役場職員に対しては、前村長はトップダウン型のマネジメント方式をとっていたという背景があります。

トップダウンも良いのですが、行き過ぎると、職員たちは『言われたことはやるけれども、自分のアイデアを考えたり、実現したりすることが出来なくなっている』というケースが多くなってしまいます。

職員が活発にアイデアを出し、それを実現できるような環境が重要だと思い、このスローガンを掲げました。」

 

充実した住宅取得支援

大衡村では、2010年前後にセントラル自動車(現:トヨタ自動車東日本)を始めとする企業誘致に成功しています。

その影響もあってか、2019年5月、大衡村の人口は17年ぶりに6,000人に回復しました。

具体的にどのような移住・定住施策に取り組んでいるのでしょうか?

「まず、108戸の住宅を有する団地の造成を行いましたが、発売と同時に完売させることが出来ました。

補助金も思い切って付けました。

新しく新築住宅を取得した世帯に50万円、加えて、村外からの転居なら30万円、村内の建築業者を利用したら50万円、転居者が40歳未満なら20万円を助成しています。

また、住宅用太陽光発電システム等を設置した場合や、村内にトヨタ自動車東日本があるので、村内に所在する工場で生産された自動車等を購入した場合はさらに助成しています。

ここまでしないと、人口減少時代に転居先として大衡村を選んで頂けないと考えています。」

人口回復の裏にある子育て支援施策

移住・定住促進を行う上で、萩原村長が特に重視しているのは「子育て支援の充実」だそうです。

「私が就任する以前から、大衡村では『18歳までの医療費無料』という施策を全国に先駆けて、いち早く実施していました。

子育て支援をさらに拡充させようと、『万葉のびのび子育て支援事業』を立ち上げました。

具体的には、妊婦さんにタクシー乗車やおむつ・粉ミルク購入に使用することが出来る5万円分の子育て支援券を交付するものと、新たに赤ちゃんが誕生したら5万円、小学校・中学校入学時にそれぞれ3万円助成するというものの2本立てです。

このような施策が功を奏し、『大衡村の子育て支援施策に惹かれて転居を決めた』という声も頂いておりますし、実際転居されてくるのは20~30代の子育て世代が中心です。

 

人口の定着に必要なこと

順調に子育て世帯の流入が増えているように思えますが、人口の定着には「雇用」と「教育」の面で課題が残っているそうです。

「上述の通り、企業誘致に力を入れていますので、村の若者たちを雇用していただければということで、村内企業に対して雇用奨励金を交付しています。

しかし、雇用までなかなか至らないのが現実です。

例えば、トヨタ自動車東日本株式会社には1,000人以上の従業員がいますが、大衡村内からの雇用は数人に留まっています。

村内の子どもたちの勉学を奨励する目的で、村独自の奨学金を設けてはいるのですが……。

せっかく大企業と言われる会社が村内にありながら、なかなかそこに就職できないもどかしさがあります。

また、大衡村の子育て支援がいくら充実しているとは言え、子どもに良い教育を受けさせようと思ったら、教育環境がより充実している仙台市やその近郊都市に住むことを選んでしまうという現実もあります。

そこで、産学官での連携も視野に入れながら、教育環境を充実させ、子どもたちに必要な力を身に付けさせることを考えています。

 

人口回復のその先に続く村づくり

村長が今後力を入れていきたいことは、住宅団地での市街地形成と、観光だそうです。

「まず一つ目は、108戸の住宅団地が完売したその先の、まちづくりが不可欠だと考えています。

地権者と業者の皆さんとも連携しながら勉強会等を開催しているところです。

工場がある関係で昼間の通勤人口が多いので、その方々からお金を落としていただける仕組みを構築することも必要だと考えています。

2つ目の観光については、村内に『牛野ダム』というキャンプ場があり、キャンプ愛好者たちの間で大変人気な施設となっています。

村として誘致やPR等を行ったことは一切無いのですが、インターネットを中心に話題になっているそうです。

しかし、料金は無料なので、村に一切お金は落ちません。

この状況が非常にもったいないと思っています。

そのため、牛野ダムをきっかけに村内を周遊していただきたいのですが、ダム周辺に飲食店等がほぼないのです。

牛野ダムというチャンスを活かして、大衡村にどうにかお金を落としてもらえるような村づくりをしていきたいと考えています。

何より、宮城県内唯一の”村”ということで、その規模に合った、コンパクトだけれども住民が安心して暮らせる村を作っていきたいです。」

逆境の中就任するも、村政への信頼回復に努め、この春2期目を迎えた萩原村長。

子育て世代をターゲットとした人口増加施策が一定の成果を生む中でも、その先に持続する村のあり方を模索する姿が印象的でした。

貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

 

 

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監修 島越彩香 SAYAKA SHIMAKOSHI
宮城大学在学中に、一般社団法人MAKOTOでのインターンを経験。
2019年5月より、MAKOTO WILLに参画。PR・マーケティングチーム、アシスタント業務に従事。

 

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