地域おこし協力隊(以下、協力隊)制度は、上手に活用できれば魅力的な人材を地域に呼び込むことができ、地域の可能性を広げられる制度です。しかし、MAKOTO WILLはこの制度の活用に課題、特に「募集」「定住・定着」に関する課題を抱えている自治体をたくさん見てきました。

多くの地方自治体で協力隊事業の受託運営を行うMAKOTO WILLでは、どのようにしてこのような課題を乗り越えているのかー。その”コツ”をまとめたホワイトペーパ―を公開中です。本記事では、その資料のなかから特に大事な2つのポイントを解説します!

 

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執筆 佐藤春乃 HARUNO SATO

国際教養大学国際教養学部在学。グローバル・スタディス課程で、環境学・社会学の領域を履修中。2020年9月にMAKOTOグループにインターンとして参画。広報等の業務に従事。

 

「募集しても応募が集まらない」「定住・定着につながらない」

これらは、私たちが自治体の担当職員の方々と話すなかでよく耳にする課題です。

実際に、総務省による調査結果のなかでも31.8%の自治体が「募集」に課題を抱えていると回答しています(注1)。また、協力隊員としての活動を終えた後も地域に定住した方のうち、3〜4年後に25%が、7〜8年後には43%がその市町村を離れていたという研究結果も出ています(注2)。

 

参考:

注1)総務省「令和元年度の地域おこし協力隊の隊員数について」今後の地域おこし協力隊における課題について 2022年1月17日

注2)日本経済新聞「地域隊員、1年で25%退任 住民・行政との関係に悩み」 2022年1月17日

 

私たちはこれらを、2つの独立した課題ではなく、2つの深く関連している課題だと捉えています。そのため、「募集」と「定住・定着」に関する課題があるという場合、多くは「募集」での失敗が「定住・定着」での失敗に繋がる、悪循環に陥ったケースではないかと考えています。

 

vicious cycle

 

ここからは、そんな負のスパイラルにはまらないためにMAKOTO WILLが最も大切だと考えている2つのポイント「精度の高い目的設定」「目的からの逆算」を解説します!

 

1.募集前にまず、精度の高い目的を設定

悪循環に陥らないために必要なのは、募集をかける以前に緻密で明確な目的を設定すること。つまり、協力隊員を採用することで達成したい、最終的なゴールを言語化することです。できるだけ精度が高くなるように具体的に言語化し、組織内で共有することが重要だと考えます。

こうすることで、より人材を惹きつけられる求人作成につながるほか、自治体側がどんな受け入れ体制を準備すると良いか(例:創業相談窓口の設置)など、定住・定着など次のステップに関する議論もしやすくなると考えられます。

 

目的を言語化するうえで犯してしまいがちなミスが、「目的」と「目標」を混同することです。

目的は、最終的なゴールや達成したいこと。そのために達成すべきことが目標です。

 

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例えば、「地域企業が受入れ、〇〇に従事してもらう」ことを目的と位置づけてしまった場合。ターゲット人材(採用候補者)から見ると、〇〇に従事することにどのような価値があるのか?なぜその企業は〇〇に従事する人を求めているのか?といったことが分からず、魅力的な求人内容に映らない可能性があります。

 

「地域企業が受入れ、〇〇に従事してもらう」ことで、成し遂げたいゴールがあるはずです。それを目的としてしっかりと言語化しましょう。

 

ただし、目的だけを言語化すればいいわけではありません。「地域企業が受入れ、〇〇に従事してもらう」ことで「〇〇というスキルを伸ばし」、「そのスキルを活かして地域の〇〇という課題解決に取り組んでもらう」といった、目標→目的までの流れが言語化された精度の高い目的設定が必要です。

 

<目標→目的の例>

目標 目的 さらにその先の目的
地域企業が受入れ、〇〇に従事してもらう 地域企業での経験を通じて〇〇というスキルを伸ばす そのスキルを活かして地域の〇〇という課題解決に取り組んでもらう

ちなみに、地域おこし協力隊には様々な種類がありますが、1つのタイプが優れているということはありません。各自治体の状況に合った種類の協力隊で、募集をかけることが望ましいでしょう。この見極めをするにあたっても、精度の高い目的設定は必須です。

 

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2.目的達成に必要な人は?支援は?目的から逆算して考える

目的が明確になれば、ここから逆算することで「採用」「定着〜活躍」のプロセスにおいて的確な施策を打っていくことが出来るはずです。

最初に目的から逆算できるのが、採用のプロセスにおいて重要な、具体的なターゲット像の明確化。例えば目的が「農産物のブランディングや販路開拓を通じて地域の名産品を増やすこと」とはっきり設定されている場合、以下のような人物像に絞り込んでいけるのではないでしょうか?

協力隊としての基本条件 地域条件
人間性 ・地域と相性がいいキャリアプランを持っていること

・地域住⺠と良好な人間関係を築ける人間性

・起業家精神

・農業ビジネスに挑む意欲がある

・先輩農家と良好な関係性を築ける人間性

・貪欲に学ぶ姿勢

スキル ・生業を作れるビジネススキル

・成⻑意欲

・ブランディングや販路開拓の知見があることが望ましい

目的に沿った条件を検討することで、募集していく人物像も自ずと見えて来るはずです。

 

そして、目的とターゲット像が定まれば、それに合致する定着支援体制を整備するなど、「定着〜活躍」に通じる施策を考えることができます。

 

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このように「目的設定」から順に「採用」「定着~活躍」と各プロセスを連動させて考えることで、自治体と地域おこし協力隊のWin-Winな関係を構築し、協力隊事業を軸とした地域の発展につながるのではないでしょうか。

 

おわりに

精度の高い目的とは、制度活用のゴールを明らかにし、そのためのステップとなる「目標」まで言語化された目的のこと。これが設定できれば、あとは目的からの逆算で、採用・定着〜活躍のプロセスにおいてもより的確な施策を打っていくことができ、悪循環に陥らずに制度をうまく活用できるはずです!

 

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