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4.社会の<前提条件>は変化し続けている。

人口増加社会における政策には、「未来は過去の延長線上にある」という前提条件がありました。しかし、人口減少社会になると、「未来は過去の延長線上にない」前提に変化していきました。

 

中軽米氏:よく「お役所仕事」と揶揄されるものに、先送りがあります。しかしかつては、先送りは正しい行為だったのです。それは、人口が増加して税収が伸びていくことで、より解決しやすくなる、しまいには自然に解決できるというロジックが成立していたからでした。ところが、人口減少社会に入ったことで、課題の解決がどんどん困難になっていき、それどころか未来はどうなるかすら分からない状況になってきました。こういった<前提条件>の変化にともなって、課題解決の方法も変わらなければいけないのではないでしょうか。

 

未来は過去の延長線上にない

前提条件が変わった今でも、過去の前提条件のまま成り立つルールに違和感を覚える職員の方もいるでしょう。では新たなルールに対応した政策とはなんでしょうか?この点に関して、中軽米氏は「起業家を育てる一択の時代」というお話をされていました。

 

中軽米氏:人口増と税収増、GDP増を基本に据えた政策、例えば、企業誘致、産業振興、補助金による支援などは、実はワークしなくなってきているのです。つまり、過去の<前提条件>の上に成り立つルールは、既に限界を迎えています。重要なのは、新しい市場経済のルールの上で、新しいゲームをやることだと考えます。

 

今までは、「GDPの増加」というゲームだったものが、現在では「事業価値を高める」というゲームに変わってきているといいます。つまり、旧来型の付加価値から利益を上げて再投資というルールはもはや非効率であり、成長が期待できる事業に投資をして、そこから出た利益をもって次の事業を起こすという仕組みを、自治体でも取組まなければならないのです。

起業家を育てる一択の時代

 

中軽米氏自治体が投資すべき、事業価値を生み出せる人間とはどういう人間かというと、「起業家」しかないのです。「起業家」と呼ばれる人しか、頭の中の妄想を形にしたり、価値を生み出せる人はいない。そういった人を生むことこそ、次の産業政策のネクストノーマルになってきます。投資を呼び込めるような事業を創出する人、これを創ることが現代の自治体に求められていることだと考えます。一見難しそうですが、これには、大きな予算は必要ありません。行革や効率化で捻出できるくらいで十分できます。

 

「起業志民プロジェクト」ですら、総予算のわずか0.065%、額にして1500万円ほどで運営されているといいます。予算は年々削減されているにも関わらず、成果は年々上がっているという現状には驚かされます。

 

5.メリットを提供し続ける呪縛からの解放

“面白いこと以外、やるの禁止”というのが、「起業志民プロジェクト」のたった一つのルールです。そんなばかなと思われますが、この世界観が、世界中の志ある者たちを惹きつけました。社会にムーブメントを起こす要因とは何でしょうか。中軽米氏は「面白そう」こそが決定的な要因であると考えています。

 

中軽米氏:参加メンバーのほとんどは、スパルタキャンプに来るまで八幡平市(はちまんたいし)の読み方も知らないし、存在も知らない、ましてや移住するなんて全く考えていなかったよそうです。しかしスパルタキャンプに来た後になると、「八幡平なら、なんか面白いことが自分にも出来そうだなと思ったんです」という話をみんなするんです。

 

ムーブメントは、ただ最強に楽しんだ結果

とにかく、自分が一番楽しいと思うものとは何か。スパルタキャンプでは、この答えにたどり着くまで、何度も壁打ちをおこなったり、<なぜ>を繰り返し深掘りしたりするそうです。

 

中軽米氏:クーポン券のように人を「お得」で釣ると、次の「お得」へ移動してしまいがちです。過度にメリットを強調した動機付けを行うと、「お得」がなくなった瞬間に関係性も途絶えてしまいます。持続的に人を惹きつける要因とは、いつの時代も「お得」ではなく、人の感情です。つまり、人の情熱を、没頭を、熱狂を生み出すムーブメントであり、そこには情緒的な「面白さ」が必要なのです。

 

— メリットとは、ただのおまけ。—

この問題は、ビジネスの問題に限らず、まちづくりにおいても同じ問題です。つまり、持続性の高いまちを創っていくには、住み継がれないような魅力発信を行っても意味がないということです。

まちの【成立~衰退~消滅】テンプレ

 

中軽米氏:これからの社会において、おそらく重要なファクターになってくるのが、「住んで楽しいまち、から働いて楽しいまち」なのではないかと考えています。実際に、まちが住み継がれないという問題の解決法もここにあるのではないかなと思っています。働いて楽しいまち、自由に働けるまちといったプラットフォームを創ることが、「起業志民プロジェクト」の真の目的でもあるんです。

 

6.まとめ

いかがだったでしょうか。本セミナーでのお話を以下のようにまとめました。

 

 ーー 人口減少という現象の背景にある、<なぜ>を突き詰め、<ファクト>を掘り下げることで、本質性の高い課題を見極めることができ、それが後の「起業志民プロジェクト」成功の大きなカギとなった。解決策として八幡平市にできることが「IT起業家を増やすこと」だと推論し、「スパルタキャンプ」を始めた。そして、トライ&エラーを繰り返した結果、たまたま現在のエコシステムへと成長していった。プロジェクト成功の裏には、“面白いこと以外、やるの禁止”という世界感観があり、その考え方と行動指針が世界中の人々を惹きつける要因として働いていた。ーー

 

改めて、中軽米さんから学んだ自治体職員が明日から心がけるべき要点をまとめます。

1.現象の背景にある、<なぜ>を突き詰める。
2.<ファクト>を掘り下げることで、本質性の高い課題を見極める。
3.事業価値を生み出せる人間を育てる。
4.メリットで人を惹き込むのではなく、楽しさで人を惹き込む。

本セミナーでは、岩手県八幡平市の中軽米真人氏により「創業支援事業の始め方〜八幡平市起業志民プロジェクトから学ぶ〜」をご紹介いただきました。

振り返ると、自治体だけでなく民間のビジネスパーソンにとっても非常に学びの多いセミナーとなりました。

 

MAKOTO WILLでは、今後も東北の自治体職員の皆様、東北の中小企業や起業家をサポートいたします。

今後とも何卒よろしくお願い致します。

 

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