加美町は他の自治体と同様、若者の人口流出が止まりません。

加美町から出ていく人を抑制する施策を打つだけではなく、別の場所から若者を呼び込む施策は無いかと考えていました。

そうした時に町内の小学校が1つ廃校になりました。

『音楽に関する技術を習得し、将来音楽にまつわる仕事をしたいと考える学生のための学校を、この廃校を活用して作れないか?』と考えました。

インターネットで検索したところ、東京にある音楽専門学校の国立音楽院の存在を知り、私が考えていることを実現していただけるのではないかと思い、アポをとり、理事長に会いに行きました。

東京にある音楽専門学校の国立音楽院なら、私が考えていることを実現していただけるのではないかと思い、自らアポをとり、理事長に会いに行きました。

『音楽を活用して、加美町に若者を呼び込みたい』という想いを伝えたところ、その場で加美町への新校舎設立が即決となりました。

偶然ですが、国立音楽院も『音楽と福祉というテーマで地方創生に貢献できないか?』という考えがあったそうで、音楽に関心がある自治体に企画書を郵送しましたが、全く反応が無かったそうです。

私の想いと共鳴したため、今回の即決に至ることができました。

現在は、加美町内のキャンパスには、学生65名が通学し、講師も入れますと約50名が加美町に住んでいます。

また、将来卒業後は、学内にある工房に残り、バイオリン制作や管楽器リペアをしながら、後輩の指導をする方も出てくるでしょう。

自らの楽器製作・リペア工房を町内に開業する方が出てくることを期待しています。

加美町「文部科学省『みんなの廃校プロジェクト』に旧上多田川小学校が掲載されました」より

企業と自治体がWin-Winな関係を作る

 

ーー上述の国立音楽院以外にも、積極的な民間との連携を狙う猪股町長。最後に、これまでの公民連携事例や、今後挑戦したいことについてお聞きしました。

加美町の主な公民連携事例 内容
「モンベルフレンドタウン」に登録 全国94万人のモンベル会員に、ウェブ、冊子等でのPR。環境スポーツイベント“SEA TO SUMMIT”を開催。
トヨタ関連会社
(宮城トヨタ自動車株式会社ほか)
チリ共和国パラリンピック事前合宿時に必要とされる福祉車両の提供、ボランティア派遣による支援、必要車両の寄贈など。

「他に民間企業と連携した事例として、アウトドア用品メーカーのモンベルとの連携があります。

この取り組みの背景には、薬萊山や鳴瀬川、のどかな田園風景といった加美町の自然環境を活かしたアウトドア体験を、モンベルのブランド力を活用してPRし、さらなる交流人口拡大を目指していく、という期待があります。

アウトドアを軸とした町づくりの一環として、『ボルダリングパークやくらいWALL』を2018年に新たにオープンしたほか、競技カヌー専門の『鳴瀬川カヌーレーシング競技場』を障がいの有無に係わらず、カヌーを楽しんでいただけるよう、現在改修しています。」

加美町「ボルダリングパークやくらいWALL」(加美町やくらいのペンションKAMIFUJI様サイトより)

また、加美町は2020年の東京オリンピックにおいて、チリ共和国のホストタウンに登録されています。

チリ共和国の事前合宿に際して必要な車両や、ボランティアの派遣をトヨタ自動車株式会社の関連会社に協力いただきました。

本件に限らず、今後はトヨタ自動車株式会社と連携し、新たなモビリティサービスも提供していけないかと考えています。

中山間地域での交通網をどう設計していくかということは、全国的な課題だと思いますが、加美町も例外ではありません。

将来的には、トヨタ社が2018年に発表した、モビリティサービス専用EV(電気自動車)の『e-Pallet』等を活用して、コンビニや診療所などの機能を持ったEVを町内に走らせられないかと考えています。

こういった取り組みは、加美町だけではなく、トヨタ社にとっても新規事業の種となる可能性があります。

企業と連携するときは、このようにWin-Winな関係性を作り出すことが重要だと考えています。

時には自らが動きながら、目指す町の将来像に向けて取り組む猪股町長。

「音楽」や「アウトドア」など、町内に元々ある資源を活用しながら新たな挑戦を仕掛ける姿が印象的でした。

貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

 

 

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