今回のインタビューは福島県会津若松市の室井照平市長。

会津若松市では「スマートシティ会津若松」の推進を掲げ、ICTや環境技術などを活用し、力強い地域社会と、安心して快適に暮らすことのできるまちづくりの実現に向けて取り組んでいます。

室井市長に「スマートシティ会津若松」の具体的な取り組みと、今後の展望についてお聞きしました!

会津若松市 室井照平市長
会津若松市議会議員、福島県議会議員を経て、2011年8月より現職。

 

 

 

インタビュアー・執筆:島越彩香
宮城大学在学中に、一般社団法人MAKOTOでのインターンを経験。
2019年5月より、MAKOTO WILLに参画。

 

 

市の強みをバネに先進技術の実証地域を目指す

ーー「スマートシティ(※)会津若松」の取り組みはどのような背景で開始されたのですか?

「スマートシティ会津若松」は、2013年2月に発表した施政方針と、「地域活力再生に向けた取組み~ステージ2~」にて、初めて掲げました。

「地域活力再生に向けた取組み~ステージ2~」に関しては、東日本大震災と原子力発電所事故による影響からの復興としての取組みについてまとめたものです。

これをまとめる上で、市の課題と特色・強みに関して改めて考えたのが、下図です。

市の課題を、先進技術の実証地域、ひいては新産業の集積地になることで乗り越えようと打ち出した方針こそ、「スマートシティ会津若松」です。

※スマートシティ
総務省によると「都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化し、生活の利便性や快適性を向上させるとともに、人々が安心・安全に暮らせる街」のこと。日本の地方自治体が主導するスマートシティに向けた取り組み事例としては以下が挙げられる。

・ビーコンタグとスマートフォンを活用した、通学中の子どもや、認知症の影響で行方不明になる可能性のあるお年寄りの見守りサービス
(兵庫県加古川市「ビーコンタグ(BLEタグ)を活用した見守りサービスで更なる安全安心なまちへ!

・中山間地域におけるドローンによる物流システムの構築(実証中)
( 長野県伊那市「日本初! 河川上空を幹線航路とする新たなドローン物流システム構築と、官民協働によるサプライチェーン形成を組み合わせた物流の事業化に向け、伊那市が実証をスタート」)

 

ーー「スマートシティ会津若松」を掲げたときに、市民の皆さんからはどのような反響がありましたか?

中には「よくわからない」とおっしゃる市民の方もいましたが、めげることはありませんでした。

横文字ですし、完全に新規の取り組みですので、最初は受け入れがたいものだったかもしれません。

じっくり議論をすることも大切ですが、「まずはやれることをやって、実績を作ろう」という想いの元、進めました。

ICTの力で市民にやさしい市役所窓口に変革

 

ーー続いて「スマートシティ会津若松」の具体的な取り組みについてお聞かせください。

以下の表のように、3つの視点のもと、様々な施策を進めています。

 

視点 具体的取り組み
地域活力の向上 首都圏のIT企業が中心に入居するICTオフィス「スマートオフィスAiCT」外国人向け観光サイト「VISIT AIZU」

木質バイオマス発電によるエネルギーの地産地消

電気自動車の普及促進

市民生活の利便性向上 地域情報ポータルサイト「会津若松+」各種証明書のコンビニ交付サービス

タブレット受付サービス「ゆびナビ」

情報メール配信サービス「あいべあ」

母子健康情報サービス

学校情報配信アプリ「あいづっこ+」

LINEを活用したAIによる自動応答サービス

市民との情報共有の促進 オープンデータに向けた取り組みローカル情報交流アプリ「ペコミン」

「除雪車ナビ」

(会津若松市「スマートシティ会津若松の実現に向けた取り組みについて」を参考に作成)

 

ーー本当に様々なことに取り組んでいるのですね。中でも、市や市役所が特に大きく変わった事例はありますか?

1つ取り上げるとしたら、タブレット受付サービス「ゆびナビ」ですかね。

「ゆびナビ」のデモンストレーション動画

 

一般的な役所では、証明書などを発行する際に、市民の皆さんは立った状態で、申請書に記入すると思います。

しかし、高齢者や、子どもから目が話せない子ども連れの方にとって、長時間立ったまま記入するのは大変なことです。

そこで、職員がタブレットPCを持ち、本人聞き取りによる各申請書の受付・証明書発行、市民の方の誘導を行うサービス「ゆびナビ」の提供を開始しました。

すると、手続きの簡素化にもつながり、証明書の発行にかかる待ち時間が大幅に減少しました。

また、職員の意識も変わり、困っている人にお声掛けする係を新たに配置したり、「常に窓口の外で市民の皆さんの対応をするので、自分のデスクは必要ありません」と言う職員が現れるまでになりました。

今では、デスクを排して空いたスペースを、市民の皆さんが手続きが完了するのを座って待つ場にしています。

 

ーー動画を見ると、一般的な手続きに比べると遙かに手間が少ないことが伝わってきます!このような施策は、誰のアイディアが元になっているのですか?

こういったICTを用いた取り組みの多くは、職員が自由にやりたいことを形にしています。

職員は「市長はICTを用いて、市民生活を豊かにできる提案だったらOKを出してくれる」と思っているようで、意欲的になっています。

「会津若松+(プラス)『LINE de ちゃチャット問い合わせサービス』」を実際に使用する様子

新たなサービスの創出を通じ「おもしろいまち」にする

 

ーー最後に、今後力を入れたいと考えていることについてお聞かせください。

まずは、地域課題の解決のために、これまで構築してきたデータを活用していきたいです。

市では、データの蓄積・利活用(オープンデータ化)のための情報基盤「DATA for CITIZEN」を構築しています。
現在、市の184のデータをオープンにして、学生や社会人が中心となって46のアプリを作ってくれました。
象徴的なものは、「消火栓マップ」です。
消火栓の位置情報を示すというシンプルなものですが、消防団の人も消火栓マップを確認し、活用しているそうです。
会津若松市を次のステージに進めるため、データを活用しながら、遠隔診療や農業のICT化といった地域課題解決のためになる技術を実装のフェーズに持っていきたいです。

会津若松市消火栓マップのスクリーンショット(「会津大学 Code for AIZUホームページ」より)

 

ーー市の課題で特に解決したいことはありますか?

やはり少子高齢化です。

合計特殊出生率は今は約1.6ですが、2.2まで上げたいと思っています。

リーマンショックの後から若い人たちが外に出ていくトレンドが加速して、現在では高校卒業し、就職を希望する人のうち4割が外に出ていきます。

「市政だより」で、会津若松市で働くことをテーマにした特集を行ってはいますが、なかなか働く場所として認知されていないのが現状です。

今後は様々な方法で市内の魅力的な企業の情報を発信し、定住に繋げていきたいと思っています。

人口流出や高齢化が解決困難なのは事実です。

スマートシティ会津若松の取り組みを通じ、役に立つサービスをどんどん創り出し、「おもしろい、ワクワクする街だ」、「住んで良かった」と言われるような会津若松市にしていきたいです。

室井市長の新技術や新たな取り組みに臆せず、どんどん取り入れようとする姿勢は見習うべきものがあると感じました。

貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

 

 

【須賀川市長インタビュー】市民のためのまちづくり。行政主体ではなく、市民と協働でまちづくりを進める。 ← |

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