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はじめに

総務省では、自治体がクラウドファンディングを利用してふるさと納税を募る取り組み「ガバメントクラウドファンディング」を推進しており、財源の確保やPRのために自治体が実施する事例も増えてきました。

一方で、「どれくらい手間がかかるか分からない」「歳入増加の手段としてどこまで有効か分からない」といった不安を感じ、活用を見送っている方もいるのではないでしょうか?この記事では、ガバメントクラウドファンディングとふるさと納税との違い、事例から分かるメリット・デメリットについて、事例を交えて徹底的に解説していきます。

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執筆 佐藤春乃 HARUNO SATO

国際教養大学国際教養学部在学。グローバル・スタディス課程で、環境学・社会学の領域を履修中。2020年9月にMAKOTOグループにインターンとして参画。広報等の業務に従事。

 

 

 

ふるさと納税を取り巻く環境変化

制度開始から10年余りが経過したふるさと納税。

魅力的な返礼品や、税控除が受けられるといったことから消費者に広く普及し、ふるさと納税の受け入れ額は年々増加しています。

一方、過度な返礼品競争が見られるようになったことから、総務省は「寄付額に対する返礼品の金額の割合を3割以下」、「地場産品以外の返礼品の禁止」といったことを求めるようになりました。

これと同時に、ふるさと納税で集めた寄付金の使途や成果を明確化し、寄付者との関わり合いを継続的に持つことによって交流人口の増加に繋げるよう要請しています。

そこで注目が集まっているのが、ガバメントクラウドファンディング型のふるさと納税です。

 

ふるさと納税とガバメントクラウドファンディングの違い

 

ガバメントクラウドファンディングとふるさと納税はどう違うのでしょうか?

以下の表に、ふるさと納税型とガバメントクラウドファンディングの違いを簡単にまとめました。

ふるさと納税型(購買型クラウドファンディング) ・寄付先は、返礼品で選択

・返礼品は、サービスや地場産品が中心

ガバメントクラウドファンディング ・寄付先は、使い道で選択

・返礼品は、地場産品以外にも様々ある。(※無い場合もある)

・住民税の控除

・自治体 / 民間どちらが主体のプロジェクトでもOK(ただし民間主体のプロジェクトについても、自治体の予算の関与が必要)

ガバメントクラウドファンディングでは、初めから寄付金の使途を明確にし、寄付者は「応援したい!」と思える自治体を選んで寄付をすることが出来ます。大きな違いは、寄付者が寄付先を返礼品で選ぶか、寄付金の使途で選ぶかという点です。

また、ガバメントクラウドファンディングの返礼品は一般的なふるさと納税と同様に地場産品であることもありますが、寄付の使い道に関連するモノであるケースも見受けられます。

例えば寄付金の使途が「イベントの開催費用」だとしたら、そのイベントの入場券を返礼品に設定するといったように、開催費用と来場者の確保を同時に実施することが可能です。

このようなケースは、新たな事業のPRや交流人口の拡大にも繋がることが予想できます。

 

 

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[事例1]花岡高行 様 / 南相馬市 経済部 観光交流課 観光係

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1000年続く日本一の侍・馬事文化「相馬野馬追」を守るために、2020年7月18日~9月20日の間に目標額の122%に当たる12,244,000円を集める。(購買型クラウドファンディング)

プロジェクト主体:相馬野馬追執行委員会

プラットフォーム:CAMPFIRE

https://camp-fire.jp/projects/view/300692

 

〇実施したきっかけ

きっかけは相馬野馬追の関係者から寄せられた「お金が足らない」という切羽詰まった訴えです。馬主の皆さんは年に1回の晴れの舞台である野馬追のために馬を飼っているものの、金銭的負担が重く馬を手放そうかと思っているという話が多く聞かれるようになっていました。市としても馬事文化を守りたかったので、スピード感を持って資金を集められるCFを行おうと提案しました。

はじめは「クラウドファンディングって何ですか?」という野馬追関係者も多かったです。そのうえ関係者も5つの騎馬会、3つの神社、7つの自治体にまで多岐にわたったため納得を得るまでが大変でしたが、1カ月ほどで実施に踏み込めました。それほどに緊急度が高く、他にお金の当てがなかったということでもあります。

 

〇クラウドファンディングのメリット

CFを実施することで、支援金を集めることに加え、相馬野馬追のPRにつなげたいと計画段階から思っていました。実際支援者のうち県内の方は10.4%、県外は72.3%であり、県外の方からの支援が圧倒的に多かったです。遠くは関西地方、九州地方の方々からも支援をいただき、多くの方に相馬野馬追について知っていただけたのではないかと思います。

さらに、50万円の支援をしてくださった方を令和3年度の相馬野馬追に招待させていただきました。この招待には1日目の宿泊と、2日目に行われる「お行列」「甲冑競馬」「神旗争奪戦」の観覧席、観覧場所までの案内や行事の説明を行うアテンドのスタッフを含みました。クラウドファンディングでの支援をきっかけに相馬野馬追を観に来てくださる方も増えれば、より一層のプロモーション効果が見込めると考えています。

他にも、馬主の方への応援メッセージがいただけたことは励みになりました。「馬と馬主さんたちの生活や伝統が未来につながってほしいです」「このお祭りを知った時から地域の方々に深い尊敬の念を抱いておりました」「伝統を守り続け来年度は盛大に開催できるようにプロジェクトへご支援したいと思います。頑張ってください!」などといったコメントを馬主の方に伝えられたのはとても良かったです。

 

〇クラウドファンディングのデメリット

プロジェクトを進めていく中で、幾度となく「このままでは目標を達成できない…」と焦ることがありました。しかし、泥臭く、個別に声をかけたりメールを送ったりなどの地道な発信を繰り返し続けました。

 

〇実際に行った工夫

事前告知としては記者クラブ等への投げ込みを行いましたが、軸となったのはSNSの活用です。相馬野馬追執行委員会としてFacebook、Twitter、Instagramを稼働させ、野馬追の写真をあげたり、CFの周知を行ったりしました。CF実施期間を令和2年度の相馬野馬追の時期とかぶせたことで、「野馬追」について検索する方たちの目にとまるよう工夫しました。

そのほかには、馬好きの方に向けてJRA(日本中央競馬会)やその他競馬場が作成する媒体、競馬雑誌にCFについて掲載させていただいたり、かねてより相馬野馬追を応援してくださっていたデザイナーの山本寛斎様やJUNKO KOSHINO様に応援メッセージを寄せていただくといった広報活動を行いました。

さらには復興事業で関わった復興庁、経産省、総務省をはじめとする行政の方々に人づてでCFの実施について情報拡散をお願いするなど、あまりお金かけない方法で告知をしました。

南相馬市の場合、市の担当者は2人だけでした。プロジェクトの主体は相馬野馬追執行委員会でしたので、あまり市役所からのリソースは割けませんでした。

プロジェクトの実施期間である3~4カ月間、毎日30~1時間ほどの時間をCFの業務に充てていたと思います。野馬追の行事そのものに関する対応もあり忙しかったですが、デザイナーさんなどのプロの助けも得て無事プロジェクトを完了することができました。

 

[事例2]針生大輔 様 / 名取市 財政課 財政係

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閖上にかつての賑わいを取り戻すため、全壊したサイクルスポーツセンターの再建と、センターの魅力を更に高める温泉整備を決断。2017年8月10日~12月31日の間に目標額の117.9%に当たる11,792,000円を集める。(ガバメントクラウドファンディング)

プロジェクト主体:宮城県名取市

プラットフォーム:ふるさとチョイス

https://www.furusato-tax.jp/gcf/193

 

〇実施したきっかけ

名取市の場合、「何かCFでやってみてもいいんじゃないか」という話が出たことがきっかけでした。そのなかで、多くの方に関心を持っていただける取り組みは何か議論し、「震災からの復興」という分かりやすいキーワードのあるプロジェクトで実施をしようとなりました。

 

〇クラウドファンディングのメリット

名取市のプロジェクトでもPRの効果が大きかったです。我々がCFを行った2017年頃はあまりCFを実施していた団体もなかったため県内の新聞などでも取り上げていただき、市の復興への取り組みを伝えることが出来ました。支援者の皆さんから頂いたメッセージも励みになりました。

▲名取市のプロジェクトに対して支援者から寄せられたメッセージ

 

〇クラウドファンディングのデメリット

実は当初、私たちのプロジェクトは8月~11月の3カ月で行われる予定でした。しかし3カ月では目標金額を達成できず、1カ月延長することになったのです。そうしたら、ふるさと納税の書き入れ時の12月に突入したということもあり、無事達成することが出来ました。

 

〇実際に行った工夫

名取市のプロジェクトでは、メディアに対する投げ込みやプレスリリースを行い、地元紙で取り上げていただいたことが主な広報になりました。また、復興関連の施設にチラシを置くなど、「復興のために」というプロジェクトの目的に関連して目を向けていただく方も多かったです。

プロジェクトの立ち上げは他部署の職員にも手伝っていただき、1カ月ほどで準備を終えました。始まってしまえばそこまで負担は重くなく、財政課の職員2人ほどで対応していました。

サイクルスポーツセンター自体ができる前の取り組みであったので関係者も少なく、南相馬市さんのように調整が負担になることはなかったです。

 

[事例3]北海道夕張市の事例と成功に向けたポイント

北海道夕張市にある夕張高校は、急速な人口減少や夕張市財政破綻後の小中学校の統廃合等の影響で、入学者数が減少しています。

そこで、地域課題を教材とした教育プログラムの開発や、公営塾の開設など、財政破綻を経験した夕張市ならではの教育環境を整備するための費用をガバメントクラウドファンディングで募りました。

寄付金の募集にあたって、高校存続に対する生徒の強い想いや、寄付金を使って実施する地域課題解決プログラムについて分かりやすく示したことで、目標金額の3倍の2300万円余りの寄付金を集めることに成功しました。

 

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