2021年2月27日、「実践者から学ぶ!自治体がクラウドファンディングを実施するメリット・デメリット」と題したオンラインセミナーを開催しました。

 

財源の確保やPRのために自治体が「クラウドファンディング」を行う事例も増えてきました。そんななか、「どれくらい手間がかかるか分からない」「歳入増加の手段としてどこまで有効か分からない」といった不安を感じ、活用を見送っている方もいるのではないかという背景から開催されたこのセミナー。当日は福島県南相馬市と宮城県名取市のクラウドファンディング担当者様にお越しいただき、クラウドファンディングを実施して感じたメリットや苦労した点などについて話していただきました。

本記事ではそのセミナーレポートという形で、自治体がクラウドファンディングを活用する際に参考になる情報をお届けします!

 

ゲスト・プロジェクト紹介

・花岡高行 様 / 南相馬市 経済部 観光交流課 観光係

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1000年続く日本一の侍・馬事文化「相馬野馬追」を守るために、2020年7月18日~9月20日の間に目標額の122%に当たる12,244,000円を集める。(購買型クラウドファンディング)

プロジェクト主体:相馬野馬追執行委員会

プラットフォーム:CAMPFIRE

https://camp-fire.jp/projects/view/300692

 

・針生大輔 様 / 名取市 財政課 財政係

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閖上にかつての賑わいを取り戻すため、全壊したサイクルスポーツセンターの再建と、センターの魅力を更に高める温泉整備を決断。2017年8月10日~12月31日の間に目標額の117.9%に当たる11,792,000円を集める。(ガバメントクラウドファンディング)

プロジェクト主体:宮城県名取市

プラットフォーム:ふるさとチョイス

https://www.furusato-tax.jp/gcf/193

 

購買型クラウドファンディングとガバメントクラウドファンディングの違いとは?

まずは今回のセミナーで取り上げられる2つの事例に関連し、購買型クラウドファンディングとガバメントクラウドファンディングの違いについて説明します。

購買型クラウドファンディング ・一般的なクラウドファンディング

・サービスや産品をリターン設定

ガバメントクラウドファンディング ・ふるさと納税の一種

・住民税の控除

・自治体 / 民間どちらが主体のプロジェクトでもOK(ただし民間主体のプロジェクトについても、自治体の予算の関与が必要)

※一般的なふるさと納税とガバメントクラウドファンディングの違いについてはこちらの記事で解説しています。

 

なぜ、クラウドファンディングを実施することに?

タイプの違うクラウドファンディング(以下、CF)の実施に踏み切った南相馬市と名取市ですが、そのきっかけもまったく異なったものでした。

 

花岡さん(南相馬市):

きっかけは相馬野馬追の関係者から寄せられた「お金が足らない」という切羽詰まった訴えです。馬主の皆さんは年に1回の晴れの舞台である野馬追のために馬を飼っているものの、金銭的負担が重く馬を手放そうかと思っているという話が多く聞かれるようになっていました。市としても馬事文化を守りたかったので、スピード感を持って資金を集められるCFを行おうと提案しました。

はじめは「クラウドファンディングって何ですか?」という野馬追関係者も多かったです。そのうえ関係者も5つの騎馬会、3つの神社、7つの自治体にまで多岐にわたったため納得を得るまでが大変でしたが、1カ月ほどで実施に踏み込めました。それほどに緊急度が高く、他にお金の当てがなかったということでもあります。

 

針生さん(名取市):

名取市の場合、「何かCFでやってみてもいいんじゃないか」という話が出たことがきっかけでした。そのなかで、多くの方に関心を持っていただける取り組みは何か議論し、「震災からの復興」という分かりやすいキーワードのあるプロジェクトで実施をしようとなりました。

 

財源確保だけじゃない!クラウドファンディングのメリット

CFを実施することで得られるものとして「資金」が一番に挙げられるかと思います。しかし、実際にCFを行った担当者のお二方は「プロモーション効果」や「支援者からの応援メッセージ」など、資金以外にも得られるものがあったと振り返りました。

 

花岡さん(南相馬市):

CFを実施することで、支援金を集めることに加え、相馬野馬追のPRにつなげたいと計画段階から思っていました。実際支援者のうち県内の方は10.4%、県外は72.3%であり、県外の方からの支援が圧倒的に多かったです。遠くは関西地方、九州地方の方々からも支援をいただき、多くの方に相馬野馬追について知っていただけたのではないかと思います。

さらに、50万円の支援をしてくださった方を令和3年度の相馬野馬追に招待させていただきました。この招待には1日目の宿泊と、2日目に行われる「お行列」「甲冑競馬」「神旗争奪戦」の観覧席、観覧場所までの案内や行事の説明を行うアテンドのスタッフを含みました。クラウドファンディングでの支援をきっかけに相馬野馬追を観に来てくださる方も増えれば、より一層のプロモーション効果が見込めると考えています。

他にも、馬主の方への応援メッセージがいただけたことは励みになりました。「馬と馬主さんたちの生活や伝統が未来につながってほしいです」「このお祭りを知った時から地域の方々に深い尊敬の念を抱いておりました」「伝統を守り続け来年度は盛大に開催できるようにプロジェクトへご支援したいと思います。頑張ってください!」などといったコメントを馬主の方に伝えられたのはとても良かったです。

 

針生さん(名取市):

名取市のプロジェクトでもPRの効果が大きかったです。我々がCFを行った2017年頃はあまりCFを実施していた団体もなかったため県内の新聞などでも取り上げていただき、市の復興への取り組みを伝えることが出来ました。支援者の皆さんから頂いたメッセージも励みになりました。

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▲名取市のプロジェクトに対して支援者から寄せられたメッセージ

 

ーー行事や市の取り組みのプロモーションにつながったという事ですが、CFの実施自体についてはどのように告知を行ったのですか?

 

花岡さん(南相馬市):

事前告知としては記者クラブ等への投げ込みを行いましたが、軸となったのはSNSの活用です。相馬野馬追執行委員会としてFacebook、Twitter、Instagramを稼働させ、野馬追の写真をあげたり、CFの周知を行ったりしました。CF実施期間を令和2年度の相馬野馬追の時期とかぶせたことで、「野馬追」について検索する方たちの目にとまるよう工夫しました。

Facebook(フェイスブック) https://www.facebook.com/nomaoiofficial/
Twitter(ツイッター) https://twitter.com/nomaoi_official
Instagram(インスタグラム) https://www.instagram.com/soma_nomaoi/

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▲CF初日の投稿(相馬野馬追執行委員会のツイッターアカウントより)

 

そのほかには、馬好きの方に向けてJRA(日本中央競馬会)やその他競馬場が作成する媒体、競馬雑誌にCFについて掲載させていただいたり、かねてより相馬野馬追を応援してくださっていたデザイナーの山本寛斎様やJUNKO KOSHINO様に応援メッセージを寄せていただくといった広報活動を行いました。

さらには復興事業で関わった復興庁、経産省、総務省をはじめとする行政の方々に人づてでCFの実施について情報拡散をお願いするなど、あまりお金かけない方法で告知をしました。

 

針生さん(名取市):

名取市のプロジェクトでは、メディアに対する投げ込みやプレスリリースを行い、地元紙で取り上げていただいたことが主な広報になりました。また、復興関連の施設にチラシを置くなど、「復興のために」というプロジェクトの目的に関連して目を向けていただく方も多かったです。

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サイクルスポーツセンター再建プロジェクト チラシ(PDF)

 

クラウドファンディングのデメリットとは?そしてその乗り越え方

 

ーーCFを実施するにあたり、「目標金額を達成できなかったら…」といった不安が付きまとうことがあるかと思います。お二人の行ったプロジェクトではそんな経験はございましたか?

 

花岡さん(南相馬市):

プロジェクトを進めていく中で、幾度となく「このままでは目標を達成できない…」と焦ることがありました。しかし、泥臭く、個別に声をかけたりメールを送ったりなどの地道な発信を繰り返し続けました。

 

針生さん(名取市):

実は当初、私たちのプロジェクトは8月~11月の3カ月で行われる予定でした。しかし3カ月では目標金額を達成できず、1カ月延長することになったのです。そうしたら、ふるさと納税の書き入れ時の12月に突入したということもあり、無事達成することが出来ました。

 

自治体がクラウドファンディングをするのに必要なリソースは?

では、CFの実施にはどれくらいの時間や、どれくらいの労力を割くことになるのでしょうか。

 

花岡さん(南相馬市):

南相馬市の場合、市の担当者は2人だけでした。プロジェクトの主体は相馬野馬追執行委員会でしたので、あまり市役所からのリソースは割けませんでした。

プロジェクトの実施期間である3~4カ月間、毎日30~1時間ほどの時間をCFの業務に充てていたと思います。野馬追の行事そのものに関する対応もあり忙しかったですが、デザイナーさんなどのプロの助けも得て無事プロジェクトを完了することができました。

 

針生さん(名取市):

プロジェクトの立ち上げは他部署の職員にも手伝っていただき、1カ月ほどで準備を終えました。始まってしまえばそこまで負担は重くなく、財政課の職員2人ほどで対応していました。

サイクルスポーツセンター自体ができる前の取り組みであったので関係者も少なく、南相馬市さんのように調整が負担になることはなかったです。

 

質疑応答

ゲストのお二人には自治体職員である参加者の方々からの質問にもお答えいただきました!

 

ーー購買型クラウドファンディングの場合、歳入の処理が面倒な感じもするのですが、市の歳入として処理したのでしょうか?相馬野馬追執行委員会の歳入として処理したのでしょうか?

 

花岡さん(南相馬市):

市が主体でCFを行った場合、ふるさと応援基金に入れるという予算的な処理が必要になります。しかし今回のプロジェクトは相馬野馬追執行委員会が主体でしたので、民間団体の会計として処理しました。実際のところ、市としてCFを行うと歳入処理に手間がかかると思ったので民間団体主体で行いました。

 

ーーふるさと納税を利用してCFを行う場合、当初予算に経費を含めておく必要はあるのでしょうか?年度の途中からでも開始できるのでしょうか?

 

針生さん(名取市):

基本的に歳入予算は、予算を組まなくても自由に入れることが出来ます。つまり、年度の途中でもプロジェクトを開始できるわけです。募集にかかる経費などは予算がないといけませんが、そのあたりの予算はどの市町村でもふるさと納税の予算として当初予算に組み込まれていると思います。

 

ーークラウドファンディングを新たにはじめるにあたって、規則の整備等は必要なのでしょうか?

 

針生さん(名取市):

ふるさと納税を行うための基金管理の条例さえ整備されていれば、それ以上に規則をつくるという必要はないと思います。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。

セミナーの参加者からは「ふるさと納税をやっていればすぐにできるというのは目からウロコでした」「自由度や資金調達のしやすさ、わかりやすさ、スピードの面で使いやすいような気がしました」など、新たな気付きを得られたとの声が多く聞かれました。ご参加いただいた皆さん、ゲストの花岡さん、針生さん、誠にありがとうございました。

 

弊社では自治体からのクラウドファンディングに関する相談を受け付けております。「そもそもクラウドファンディングを使うのが有効な状況なのか」といったプロジェクト開始前の相談も受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問合せくださいませ。

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