今回の首長インタビューは、福島県いわき市の清水敏男市長。

いわき市は次世代エネルギーである水素に着目し、エネルギー都市としてさまざまな取り組みを行っています。

他にも海産物や農産物の徹底チェックにより安全な食材を提供するなど、東日本大震災での経験を活かし、新時代へ向けた災害に強い安全・安心なまちづくりを進めています。

清水市長の持つ想いやいわき市の魅力、将来の展望についてお聞きしました!

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菅野永  HISASHI KANNO

東北大学農学部卒。地方銀行、公務員を経てMAKOTOへ参画。二輪レースで大怪我をした経験から、「残りの人生かけて大きな挑戦がしたい」という思いが芽生え、ベンチャーの世界へ。福祉系ベンチャー企業への出向も経験し、会計・オペレーション改善・販売促進・組織構築など現場での幅広い経験を持つ。 2018年7月にMAKOTO グループ化に伴い、MAKOTO WILL代表取締役就任。

 

根底にある「自分を取り巻く環境を良くしたい」という気持ち。

私は中学時代に生徒会長として活動をしていたのですが、「学校を良くするために頑張ることは楽しかったな」という記憶が政治に関わるきっかけになったと思います。この思い出があったからこそ大学時代には弁論部に入り、部の先輩であった政治家たちに影響を受けることになりました。卒業後は議員秘書として勤め、そこで勉強したことを地元に帰って活かしたいと思い、市議会議員選挙に出馬し、政治生活が始まりました。

 

さまざまな考えをもたらした東日本大震災。このふるさとを良くしたい。

市長に立候補した理由は、県議会議員時代に東日本大震災で被災した経験があったからでした。被災当初のいわき市は、駅前や街中に車も人もいない閑散とした状態でした。「このままでいわき市はどうなるんだろう」と不安になり、自分なりにできることを考えました。その結果、「自分が市長になり、このまちを復興したい」という考えに行き着きました。それほどまでに、東日本大震災というものは大きな出来事でした。

 

もちろん私自身の他にも、東日本大震災は皆さんの内面に大きな影響を与えました。震災直後は暗い雰囲気が漂っていましたが、同時に地元愛や家族愛のような、「ふるさとへの想い」も格段に強くなったと思います。これは再び東北を、いわきを元気にしていくなかでの大きな原動力となりました。

 

市長に当選してからは、「自分が生まれ育ったふるさとを良くしたい」という一心で行動してきましたが、沿岸地域をはじめ、被災した方々は安定した生活を送れていませんでした。復旧・復興を一日でも早く成し遂げるため、多くの方々と協力したことで、本市の災害公営住宅は他の地域よりも速いペースで整備が完了し、入居していただくことができました。

沿岸域の区画整理、高台移転などの事業もひと段落し、ハード面の復興については概ね完了しました。これからはコミュニティの再生に力を注いでいきたいです。

 

余談ですが、実は私が当選した日というのは、2020年のオリンピック開催が東京に決まった日の直後でもあったのです。このニュースを目にしたときは、東京オリンピックまでにはいわきを復興させようと心に刻みました。オリンピック自体は新型コロナウイルス流行の影響で延期になりましたが、この想いは形になったと感じています。

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高水準な品質管理。どこよりも安全・安心な食材の提供に向けて。

原発事故直後は、いわゆる風評被害も多くありました。東北地方の方をはじめ、日本の全ての国民が経験したこともない災害だったので、ある意味当然のことだったかも知れません。しかし、あれから長い年月がたった今では、そうした声を聞くことはほとんどなくなりました。海産物も農産物も皆さん普通に食べていますし、「危険だ」という声を聞くこともほとんどありません。

 

事故当時は「地元のものは食べられない」という声が非常に多く寄せられました。地元の方でさえ、そうした意識があったので、学校給食にいわき市産の米を導入するにもとても長い時間がかかりました。当時は「地元産の食材ではなく、他の地域の食材を使ってほしい」という声が多く寄せられていました。

 

しかし私は「福島県の農産物ほど安心な食べ物はない」と、ことあるごとに話してきました。なぜなら、福島県、そしていわき市では食材をすべてチェックしており、安全性が確保できないものに関しては市場に出ることがありません。安全性を確保し、安心な食事をしていただくために徹底したチェック体制を整えています。

一方で、他の県では、チェックすらしていないこともあるようです。この点からも福島県やいわき市の食材がいかに安全なのかということを理解していただけると思います。

今後もこうしたチェック体制を万全にし、ポジティブな意味でのブランド化を図っていきます。

 

石炭からはじまった、エネルギーを生み出すまち。

いわき市はかつて、石炭で栄えた地域です。全国に多くの産炭地がありますが、いずれも右肩下がりになってしまいました。「このままではいけない」と立ち上がった地元の炭鉱会社の社長が常磐ハワイアンセンターを立ち上げたことで、いわき市内の大手の炭鉱は倒産することなく維持することができました。その誕生から成功までの軌跡は映画「フラガール」でも取り上げられました。このレジャー施設は今もスパリゾートハワイアンズとして営業しています。

 

このようにいわき市はエネルギーと切っても切り離せない地域です。いわき市には火力発電所があります。最近では「IGCC」という石炭ガス化複合発電プラントを建設しており、まもなく稼働を迎えます。北隣にある広野町にも同様のIGCCが建設中であり、これら2つをあわせると原発一基分のエネルギーを生み出すことができます。これにより石炭の輸入が増え、港を活性化することにも期待を持つことができます。

 

発電に関しては火力発電のみならず、日照時間の長さを活かした太陽光発電、風力発電、そしてバイオマス発電、水力発電も行っています。それだけいわき市とエネルギーは密接な関係があり、これからもまちの中心産業になっていくと期待しています。

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クリーンエネルギーの水素に着目。エネルギー都市を目指す。

いわき市では最近、水素に着目しています。平成31年3月には水素ステーションが市内に完成しました。これは福島県において初めてのことです。水素ステーションの稼働に合わせ、商工会議所全体で一致団結して水素エネルギーの普及を後押ししていこうということで、関連する企業がトヨタ自動車の水素燃料車「MIRAI」を一事業所あたり一台以上購入し、現在では45台がいわき市内を走っており、これからもっと増やしていこうと考えています。

 

また、民間のバス事業者に補助金を出し、水素燃料バスを購入していただきました。そのバスは路線バスとして走っており、東北初の水素燃料バスとなりました。

 

このように、いわき市ではこれからもこの次世代エネルギーを活用していこうと考えています。福島県浪江町には水素工場があり、ここで生み出された水素を地産地消していきたいと県では考えています。そこで、いわき市でもこの水素を多く利活用し、エネルギー都市として躍進していきたいと考えいます。

 

安全・安心なまちをつくるために。これまでの経験から新時代へ。

これまで東日本大震災からの復旧・復興に全力で取り組んできたところであり、おおよその目標を達成することができました。震災前の状態に戻るだけでなく、前よりも良くなってきたところです。これからは新しい時代に向けて、これまでの経験を活かし、災難・災害に強いまちを目指していきます。地震や台風、感染症流行などの危機事象が起きても克服できるまちになることが、とても大切だと感じています。

 

そこで「危機管理部」を今年の4月から新設します。消防職員も増員すべく、令和3年度には28名増員し、令和4年度以降も段階的に増員していくこととしており、安全・安心なまちの構築に向けて着実に動いています。さらに雇用の確保や、子育て環境、教育、福祉の充実に取り組んでいきます。これらの取り組みにより、この地で生まれ、育ち、そして子どもを育てていける「持続可能なまち」をつくりたいと思っています。安心して一生を過ごせるようなまちを、これからも市民の皆様と創り上げていける市長で在りたいと思います。

 

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東日本大震災での経験を活かし、災害対策への取り組みや食材の品質管理の徹底などに加えて、新時代へ向けて暮らしやすいまちを目指す清水市長。

エネルギー都市として躍進するため、各種発電を効果的に利用したり、水素に着目したりするなど、将来を見据えてまちづくりを進める姿勢がとても魅力でした。

かつては炭鉱で栄え、産業構造の転換を成功させつつも現代において再度エネルギー都市を標榜するいわき市の姿は地方創生のひとつのロールモデルになるでしょう。

 

貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

 

 

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監修 佐藤春乃 HARUNO SATO

国際教養大学国際教養学部在学。グローバル・スタディス課程で、環境学・社会学の領域を履修中。2020年9月にMAKOTOグループにインターンとして参画。広報等の業務に従事。

 

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