今回の首長インタビューは、福島県福島市の木幡浩市長。

 

福島市はNHKの連続テレビ小説「エール」のモデルである古関裕而さんの出身地として、最近注目を浴びています。ほかにも花の名所が並んだ「ふくしま花回廊」や、さまざまな果物の産地でもあり、とても魅力に溢れたまちです。

 

福島市は東日本大震災により、原発事故もありましたが、先を見据えた「創生のための復興」を進めるなど、「世界にエールを送る」まちづくりを進めています。

福島市の魅力や、将来の展望について木幡市長にお聞きしました!

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菅野永  HISASHI KANNO

東北大学農学部卒。地方銀行、公務員を経てMAKOTOへ参画。二輪レースで大怪我をした経験から、「残りの人生かけて大きな挑戦がしたい」という思いが芽生え、ベンチャーの世界へ。福祉系ベンチャー企業への出向も経験し、会計・オペレーション改善・販売促進・組織構築など現場での幅広い経験を持つ。 2018年7月にMAKOTO グループ化に伴い、MAKOTO WILL代表取締役就任。

 

転機になった東日本大震災。福島をより良いまちに。

私は福島から40㎞ほど離れた飯舘村で生まれ、大学卒業後は地方と中央を行ったり来たりしながら働いていました。主にまちづくりや防災など、地域の課題の解決が仕事でした。そんな折、東日本大震災が起こり、つらい状況のなか被災者の方が立ち上がろうと活動しているのを見て、自分も何とか福島市の役に立ちたいと強く思うようになりました。

 

その後、福島復興局長の現場責任者を任され、復興に向けた活動に携わることもできました。自然が豊富で農業も盛んな福島市は、自然と都市が融和した田園都市です。世界的な都市になるポテンシャルはあるので、それを発揮してより良いまちになってほしいと思っていたところ、市長選出馬の要請があり、出馬を決めたのが市長になるきっかけでした。市長選に当選した私は、福島市に住む方はもちろん、まわりに住む方からも素晴らしいまちだと思われるまちにしたいと思っていました。

 

停滞する組織の改革。自分で考えて動く組織へ。

市長に就任した当時、福島市は魅力にあふれたまちですが、保守的で、改革にむけて動いていないという印象がありました。これからまだまだ良いまちになる余地が多分にあり、その実現には地域にある「人、モノ、資源」をフル活用していく必要があると感じました。そこで考えたことは、いかに現場を動かすのかということです。現場を動かすことは非常に難しいことですが、市の発展のためには変えていかなければならないものです。

 

そこでまずは市の職員の意識や仕事の取り組み方の改善を最優先に考えました。停滞する組織は視点が上にあり、肝心な職員の視点で見ることができなくなっています。そうした上に手厚い文化を私が率先して壊していこうと考え、自ら動くことにしました。停滞する組織には強めのリーダーシップが必要ですが、その状況が続いてしまうと今度は依存体質になります。それを避けるため、職員ひとりひとりが自分で考えて動くように意識改革をおこなっています。そのためには成功体験を味わうことが大切だと考えているので、取り組んだ事柄をメディアにも公表し、評価を受けることでモチベーションの向上にもつなげています。

テーマ性のあるまちづくりを進める。人と商業のサイクルで賑わいを取り戻す。

これまで徹底したまちづくりをおこなってこなかったため、中心市街地は衰退してしまいました。人口減少の時代なので、これからは財政も厳しくなります。そこで大切なのが、にぎわいの再生です。福島市は原発のイメージで世界的にも有名ですが、このイメージはマイナスなものです。

 

しかしマイナスなイメージもかけ合わせればプラスに変えていけますし、そのマイナス面が強いほどプラスに変わったときのインパクトは大きくなります。ただ商業が衰退すると、人がいなくなるため、商業施設を作っても効果は見込めません。まずはまちに人が流れてくる仕組みを作ること。人が増えれば、商業も戻ってきますし、商業が戻ってくれば人が戻ってくる。この流れを作ることが大切です。

 

そしてただまちづくりを進めるのではなく、テーマ性を持つこと。単なる商店街ではなく、名所や文化性の香りあるまちなどのおもしろさを伝えられるまちづくりを進めていこうと考えています。コロナ禍でしたが、9月には駅前通りすべて使い軽トラ市を開催しました。9月の忙しい時期でしたので、農家の方の参加はあまり多くはありませんでしたが、飲食店の方も参加してくださったので、盛り上げることができました。まちづくりの原点は市であり、人が集まることで需要を生み出すこともできます。定例的なイベントにし、いろいろなところから来てもらえるようにしたいと考えています。

 

若者の定着を進めるために。未来を見据えたまちづくり。

少子高齢化社会の今、地域を持続していくためには若者の定着が必須です。そのためには若者を増やすこと、そして「このまちに残りたい」と思ってくれるようなまちづくりの推進が大切になります。福島市は教育・子育て関係に対する行政の施策が、他よりも低く感じます。若い世代が「家族を持って暮らすなら福島市だよ」と言ってくれるような未来を目指しており、そのために特色ある幼児教育を取り入れるなど、こどもたちの教育環境の整備にも力を入れています。これにより、市外の方も「福島の教育はおもしろい」と考え、移住してくれる可能性も生まれます。

 

企業誘致にしても、従来は地元の人を雇ってもらうという考え方でしたが、そもそも人口減少で人材が不足しているため、逆に外から連れてきてもらうことで移住定住を進めています。企業の応援もしていますが、これも従来とは違い、新しいビジネスモデルの構築を支援するなど、一緒に取り組む進め方を導入しました。新しく開発した商材の実験をしたいといわれた際には、施設を紹介し実証実験をしたり、市役所で使用したあとフィードバックをしたりするなど、応援にとどまらず、先へとともに歩める施策を進めています。

 

世界にエールを送るまちへ。災害を乗り越えた先にあるもの。

創生というと、復興の後におこなうものというイメージがありますが、これまで創生にむけた復興を進めてきました。コロナウイルスへの対策も同様に、単にソーシャルディスタンスを進めればいいというわけではなく、先行してデジタル化に取り組むことで、コロナ禍のあとの社会を実現していくことが大切です。常にその先を見据えて、新しい段階に行くんだという意識を強く持ち行動していきたいと考えています。

 

そして福島市は「世界にエールを送るまち」を掲げています。私たちは、東日本大震災の際にたくさんの応援をいただいたことに深く感謝をしていますが、それで終わらせないことが大切だと考えています。世界でも災害は発生していますが、福島市がこれだけ良いまちになったという後ろ姿を見せられれば、世界にエールを送ることができると思っています。その実現のために、さまざまな改革を進めていきます。

 

東日本大震災や原発事故など、世界的な災害がありながらも希望を失わず、未来を見据えたまちづくりを目指す木幡市長。

市民のみなさまを想い、そして福島市を愛するからこそ、率先垂範し行動する姿勢がとても魅力でした。

貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

 

 

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監修 島越彩香 SAYAKA SHIMAKOSHI
宮城大学在学中に、一般社団法人MAKOTOでのインターンを経験。
2019年5月より、MAKOTO WILLに参画。PR・マーケティングチーム、アシスタント業務に従事。

 

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