今回の首長インタビューは、福島県伊達市の須田博行市長。

伊達市は夏秋きゅうり出荷量日本一であり、桃やぶどうなどの果物も有名で、とても魅力に溢れたまちです。

他にも移住のための支援策や、新規出店のための支援をはじめ、高齢者の健康づくりのための取り組みなど、人を大切にしたまちづくりを進めています。

伊達市の魅力や、将来の展望について須田市長にお聞きしました!

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菅野永  HISASHI KANNO

東北大学農学部卒。地方銀行、公務員を経てMAKOTOへ参画。二輪レースで大怪我をした経験から、「残りの人生かけて大きな挑戦がしたい」という思いが芽生え、ベンチャーの世界へ。福祉系ベンチャー企業への出向も経験し、会計・オペレーション改善・販売促進・組織構築など現場での幅広い経験を持つ。 2018年7月にMAKOTO グループ化に伴い、MAKOTO WILL代表取締役就任。

 

農業がまちを明るくする。農業を産業基盤に、自然と若者を守りたい。

私は福島県の職員として長年勤務をしており、農業土木の技術者として土地改良の基盤整備や地域づくりを担当していました。その中で感じたことは、農家が元気な地域は全体も元気があるということです。伊達市は農業地帯であるため、同じように活気づけることができるのではないかと考えました。

 

農業は産業の基盤であり、産業振興にも必ずつながる。伊達市はまわりに山もあり、とても自然が豊かなまちです。だからこそ農業を基盤とした仕事づくりを仕掛け、まちを発展させたいと当時から考えていました。

 

これからさらに人口減少が進んでいくことは避けられないため、若者に移住してもらい、定着し、定住してもらえるようにしなくてはいけません。そのためには仕事をつくることが必要です。伊達市から出て働く方が多いのですが、それは働く場が少ないということも原因しています。地域で働ける人を増やすため、仕事を作らねばならないとも考えていました。

 

伊達市はとても自然豊かなまちですが、若い頃や地元に住んでいるときにはその良さにはなかなか気付け無いことがあります。外を見ることで気付くことも多いため、一度外に出た人も戻りたくなるようなまちにしたい。広い農地や里山などの自然を守り、若者が移住したくなるような仕組みを作り、支援する。そのための力になりたいと考え、市長を目指しました。

 

地域だけではなく、世界に目を向けて。農業から産業へ。

今までの農業は基本的に地域内で完結していました。地域で生産し、地域内で消費をする。これも正しい形ですが、これからは地域外の消費者に食べてもらうことが大切です。つまり全国、そして世界を相手に伊達市の農業をアピールしたい。

 

伊達市は今現在、これができています。具体的にはぶどうや桃、あんぽ柿などの出荷量が多いこと、そして夏秋きゅうりの出荷量は日本一です。このように伊達市の果物や野菜は、ブランドとして認知され、購入していただいております。これからはこうした産業としての農業をより発展させていきたいと思っています。

 

ただし、後継者不足に悩まされているのも現実です。後継者を地域内だけで探すことは難しいため、移住をしてもらうことで後継者を育てていきたい。そのためにも農業に関連した製造業や食品加工業などの企業を誘致して、働く場所を作る政策を進めています。工業団地の造成や企業誘致セミナーもおこなっており、あらゆる産業に来てもらい、働く場を提供するための取り組みをおこなっています。

 

空き家と空き店舗対策。受け身ではなく、攻めの姿勢で。

伊達市では空き家バンクを開設し、ホームページで公開しています。そして移住を促進させるために、取得費用や修理費の支援もおこなっています。受け身の姿勢では移住を進めることは難しいため、移住セミナーの開催や、一度実際に伊達市に来てもらう体験ツアーもはじめました。

 

子育て支援もしていますが、保育士さんの確保という課題もありました。そこで住宅費支援や就業の際の経費支援も行うことで、保育士さんも集まり、待機児童をゼロにするまでになりました。今後は若者にもっと多く来ていただきたいと考えています。進学で市外へ出ても、就業は地元。そうした方を増やしていきたいと思います。

 

空き店舗の活用には、改修費や家賃も大きな負担になります。そのためそうした費用に対する支援はもちろん、実際に店舗を構える前に、まずは道の駅等で出店し、ある程度軌道に乗った時点で実際に店舗を構えるという流れを作りました。こうしたテストマーケティングの機会を設けることでリスクを下げることができますし、多くの方が来てくださる場所で出店することで、売れる商品を知ることにも繋がります。これから先は、移住者と地域の繋がりをどのように作っていくかを進めていきたいと思います。

 

現場を大切にし、答えを見つける。総合的に能力を活かせる人財へ。

市の職員には、現場を大切にしてほしいと思っています。具体的には、現場に入り、その現場ではどのようなことに困っていて、それはどうすれば改善できるのかを実際に現場で目にし、考えること。他にも、移住してくる人がなにを目的にしていて、なにを求めているのかを実際に会って聞くことが大切です。だからこそ現場を大切にしてほしい。

職員はそれぞれにいろいろな部署を経験するため、よく勉強しているなと感心します。私は部署内での考えに止まることなく、総合的に見る目を持つことが大切だと考えております。大きく見ないと仕事はわからないとも思っています。そのためにも縦割りにならずに横のつながりを大切にし、これまでの経験を生かして総合的に能力を発揮してほしいと思います。常に「なぜ?」という疑問を持ち、それに対する答えを自分で見つけていくような職員を目指してほしいと考えています。

 

暮らしやすいまちへ。自然を残し、各世代が元気に暮らせるようにしていく。

伊達市は伊達氏発祥の地でもありますし、山林や田畑に囲まれた自然豊かな素晴らしいまちです。そこに住んでいるとその素晴らしさになかなか気付けませんが、都会にない魅力に溢れています。今は、どこに行っても便利さが追求されますが、そうした価値観は時代によって変わっていきます。しかし、自然や風景は変わりません。だからこそ私はこの美しい山や農村風景を残していきたいと考えています。

 

若い人たちに移住してもらい、元気なまちにすることも大切だと考えているので、子育てや教育が充実した市にしたい。もちろん若者だけではなく、すべての年代において、住み慣れた場所で長く暮らしたいまちにしたいと考えています。そのためには健康が何より大切です。伊達市には「元気づくり会」というものがあって、これは集落ごとにある集会場に集まって体を動かすことを目的にしており、ストレッチから始まり、腹筋やスクワットまでしています。こうした取り組みで高齢者が外に出る機会を増やし、心身ともに健康で過ごせるようにしていきたいと思っています。

 

私は自然を後世に残し、各世代が元気に暮らすことができるまちづくりを実現したいと考えています。伊達市は交通の便もよく、仙台などの都市部にも近い「便利な田舎」だと思っています。環境はとても良いので、さまざまな取り組みや支援策を通じ、暮らしやすいまちづくりを実現していきます。

 

 

豊かな自然を大切に考えながら、市民と移住者のための支援策を通し、暮らしやすいまちを目指す須田市長。

豊かな自然と、そこに住む人のことを大切にしながら将来をしっかりと考えてまちづくりを進める姿勢がとても魅力でした。

貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

 

 

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監修 佐藤春乃 HARUNO SATO

国際教養大学国際教養学部在学。グローバル・スタディス課程で、環境学・社会学の領域を履修中。2020年9月にMAKOTOグループにインターンとして参画。広報等の業務に従事。

 

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