今回の首長インタビューは、山形県酒田市の丸山至市長。

酒田市は日本遺産に認定された「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」やさまざまな文化財施設などがある、とても魅力に溢れたまちです。

それ以外にもデジタル化の推進や「日本一女性が働きやすいまち」を掲げ、特徴あるまちづくりを進めています。

酒田市の魅力や、将来の展望について丸山市長にお聞きしました!

hisashi_kanno菅野永  HISASHI KANNO

東北大学農学部卒。地方銀行、公務員を経てMAKOTOへ参画。二輪レースで大怪我をした経験から、「残りの人生かけて大きな挑戦がしたい」という思いが芽生え、ベンチャーの世界へ。福祉系ベンチャー企業への出向も経験し、会計・オペレーション改善・販売促進・組織構築など現場での幅広い経験を持つ。 2018年7月にMAKOTO グループ化に伴い、MAKOTO WILL代表取締役就任。

 

市長になり、酒田市を賑わいのあるまちにする。「産業振興、人を育てる」を柱に改革を進める。

私が市長になったのは、さまざまな巡り合わせからでした。市の職員として30数年勤めたころ、たまたま総務部長を任せていただけることになりました。その直後、市長が変わり、はからずも副市長を務めることとなったのですが、その市長が急逝したことから急遽市長選に出馬することになり市長を目指した次第です。

 

それまで長く市の職員を務めるなかで、自分の想いとして何か政策を打ち出すことはありませんでした。しかし「こんなまちになったらいいな」という考えを、市長になれば施策に活かして取り組めるかもしれないと思ったことも出馬に至ったきっかけのひとつです。市長に当選させていただいたあとは、「人財と風土が支える産業交流都市、酒田を目指す」を理念に掲げ、まちづくりを行ってきました。

 

酒田市は歴史的にも自由都市として栄えたまちであり、その風土を生かして人やものの交流によって、人口減少による衰退に歯止めをかけ、かつての賑わいを再生させたいと考えました。そのために、「産業振興」「人を育てる」の二つをベースにまちづくりを進めています。

 

やるべきことは産業振興。焦らず一歩一歩実現へ。

市職員時代、私は地元にある東北公益文科大学の設立に関わりました。この大学は「大学まちづくり」という理念を有しています。その中身は簡単に言えば大学がまちづくりに貢献し、まちが大学を支えるというものです。この理念を追求することで酒田市はもっともっと魅力的なまちになると考えています。

 

一般論として産業とりわけ港湾都市、観光でまちを発展させるには、道路や鉄道等社会資本の整備が欠かせません。

しかし酒田市ではその遅れが目立っており、高速道路もミッシングリンク状態にあります。それは地域の力が十分に発揮できていないからなのではないかと考え、打開策としてIT技術や女性の働く意欲の創出、さらには一度酒田市を離れてしまった方から戻ってきていただく仕掛けを作ることなどによって、地域を盛り上げられる人財をもっと多く育てたいと思っています。

 

元気を失いつつあった酒田市をもう一度右肩上がりにするために、まずはこの地域を外に売り込み、人や企業をこの地域に呼び込む必要があります。そうしてきてくれた方から酒田市にお金を落としていただくことで、酒田市の経済にも好影響をもたらすことができます。だからこそ、私が一番やるべきことは産業振興だと考えています。そのためには雇用環境が最も大切です。企業に働く人を供給できなければ企業誘致も進みません。

 

若者や女性、シニアに向け雇用創造を進めるため、IT、女性、再就職それぞれの分野で広範囲にわたって就職意欲を高めるセミナーを実施してきました。「良い人材がいるから酒田市に来てください」と企業に言えるようにしていきたいと考えています。こうした取り組みにより産業振興が実現すれば税収も上がり、それにより福祉の充実も図ることができます。焦らず一歩一歩段階を踏みながら、住みやすいまちにしていきます。

 

デジタル化の推進へと意識を変革。スピード感を大切に。

昨年までは、産業振興は人や企業の交流でかなうものと思っており、これは観光も同じだという考えで、日本遺産の認定や日本ジオパークの認証を得るなどアピールをしてきました。しかし今回の新型コロナウイルス禍により状況は大きく変わり、交流を武器にすることがしづらくなりました。そのためこれからはデジタル化の推進によって手続きの簡素化やテレワークの導入など、電子化すなわちデジタル変革(DX)が当面の課題になります。

 

酒田市では10月1日付でデジタル変革戦略室を立ち上げ、これを核として官・民・学でデジタル化を推進していきます。行政サービスや市役所業務のデジタル化や電子決済を使う事業者等への支援もはじめますが、これらは電子化を日常ツールとして利用できる世代を増やしていくという狙いがあります。少なくとも60代くらいまでの方には、いろいろな手続きの電子化への抵抗をなくしてほしいと考えています。一方で70代以上の方は対応が難しいとも考えており、そこにはアナログ的な従来型のマンパワーによる手厚い行政サービスを進めていきたいと思います。このようにすべての年代でやり方を統一するのではなく、年代に応じたサービス体制を整えていこうと考えています。

 

コロナ禍により、これまで積み上げてきたものがゼロベースに戻される可能性があります。予定通りにいかない施策も多く出てきます。そのためデジタル化に意識を向け地域と行政それぞれを変えていきたいと思っています。まずは市民向けのサービスのデジタル化ですね。具体的には、一回の手続きで完結できるような行政サービスを増やしていきたいですし、民間も含めていろいろな手続きを簡略化することで、市民の皆さんに幸福感として還元したいと思います。なによりも変革のスピード感が大事で、100点満点を得るために5~10年かけていてはいけません。40点でもいいから、1か月で動き出せる結論の方がいいと考え、多くの施策を進めています。

 

大切なのは人。「つなぐ」をコンセプトに、まちづくりをすすめる。

まちづくりの施策やデジタル化の推進について、いろいろと模索していますが、キーとなるのは成果につなげる行動ができる「人」の存在だと考えています。市役所や地域の力になるような人をどうやって育てていくか、産業、教育、福祉それぞれにおいて、この地域ならではの発想ができて、それを進めていくことができる人財をどうみいだすかです。すべての分野それぞれに人財が育つ風土を作っていくことが重要です。

 

公務員はある種「閉ざされた空間」での仕事が多いので、長く働くと視野が狭まってしまうこともあります。市長という職は外に出る機会も多く、そうしたつながりで得た成果もとても多い存在であるため、「つなぐ」をコンセプトに行動することの重要性を痛感しています。たとえば農業でも関係者だけではなく、異業種の事業者とつながることで新たなビジネスチャンスが生まれます。しかしこれまでそうした仕掛けをする組織がなかったため「サンロク(酒田市産業振興まちづくりセンター)」を作りました。また、市長に就任してすぐに民間から女性副市長を登用するとともに、「女性が日本一働きやすいまち」を宣言して、女性の活躍の土壌を固めていきたいと考えています。そのためIT技術女子のセミナーなど、さまざまなスキルを高めるセミナーを通して女性が活躍する土壌づくりを進めています。

 

失敗を恐れずに、仕掛けをしていきたい。時代の流れに乗り遅れない酒田市へ。

これからはより一層デジタル化が進むと思いますし、SDGs、ゼロカーボン社会の推進などさまざまな時代の流れがあると思います。そうした流れに対し、全国に遅れることなく酒田も進んでいきたいと思っています。税収を上げるための取り組みや、若い方たちの起業・創業支援、そして日本一女性が働きやすいまちづくりの支援など、意識的にその仕掛けをしていきます。失敗を恐れずに取り組み、酒田で暮らす喜びを市民の皆さんに提供できるようがんばってまいります。

 

「つなぐ」をコンセプトに、民間とのつながりを大切にしながらまちづくりを進める丸山市長。

自身の経験をもとに、時代の流れをみながら市民の方の幸せを考える姿勢がとても魅力的でした。

貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

 

 

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監修 島越彩香 SAYAKA SHIMAKOSHI
宮城大学在学中に、一般社団法人MAKOTOでのインターンを経験。
2019年5月より、MAKOTO WILLに参画。PR・マーケティングチーム、アシスタント業務に従事。

 

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