2020年9月11日(金)、「改めて考える。地域おこし協力隊制度活用セミナー」 と題したオンラインセミナーを開催しました。

元自治体職員である弊社代表 菅野が、自治体職員に向けて明日から使えるノウハウを提供する本セミナー。

6回目となる今回は、弊社が地域おこし協力隊の企画、採用から定着支援までを担当する「まるまるまるもりプロジェクト(宮城県丸森町)」の事例紹介や、実際に地域おこし協力隊として着任し「ふるさと名品オブザイヤー」にて地方創生大賞を受賞した山下久美さんをゲストに迎え、地域おこし協力隊制度の活用のポイントを学びました。

開催レポートをお届けします!

 

登壇者紹介

メインスピーカー

代表 菅野永

菅野 永 / 株式会社MAKOTO WILL 代表取締役

地方銀行、公務員を経て2015年1月にMAKOTOへジョイン。二輪レースで大怪我をした経験から、「残りの人生かけて大きなチャレンジがしたい」という思いが芽生え、ベンチャーの世界へ。MAKOTO地方創生事業を立ち上げ期から担当し、東北各地で自治体と連携した起業家支援プロジェクトを実施。2018年7月にMAKOTO グループ化に伴い、MAKOTO WIIL代表取締役就任。公務員時代は北海道庁市町村課職員として勤務。道内市町村の行財政運営サポート、道内公営企業の経営支援などを経験。

 

ゲスト

山下 久美 / マメムギモリノナカ 代表 / 丸森町 地域おこし協力隊

宮城県丸森町の地域資源を活用した、洗って繰り返し使えるミツロウラップ【tsu tsu mi】を製造販売。

20歳の時に、はじめて受けた足裏マッサージに感動し、セラピスト専門のスクールに入学。卒業後、17年間セラピストとしてサロン勤務。健康に対する考えを深める中で、自然と関わるライフスタイルに興味を持ち、2019年4月頃から丸森町に通い始める。その後サロンを退職し、町で休眠資源となっていたミツロウ(蜂の巣の材料)を活用した商品を開発。同年10月に移住し、町の起業支援制度を活用しながら事業を展開。2020年3月、「ふるさと名品オブザイヤー」にて地方創生大賞を受賞。

起業型地域おこし協力隊制度「まるまるまるもりプロジェクト」とは?

 

宮城県丸森町は、人口約16,000人ほどの小さな町。
しかし、この町には協力隊制度を活用して起業した協力隊が10名も在籍しています。

このプロジェクトの特徴は、移住と同時に仕事づくりも応援すること。
移住だけではなく、自分らしい仕事づくりを同時に実現していただくため、丸森町と民間企業が連携して協力隊の起業を全面的にサポートしています。

 町と民間企業によるサポートは下記の通りです。

丸森町 
月々20万円程度のベーシックインカム(最大3年間支給)で生活をサポート

MAKOTO WILL(プロデューサー)
 起業プランごとに最適なアドバイザーとの連携、事業化をサポート

RaNa extractive, inc.(クリエイティブディレクション)
 仕事づくりのためのブランディング企画など、見せ方・伝え方をサポート

 

※まるまるまるもりプロジェクト 公式サイト
https://marumarumarumori.jp/

 

地域おこし協力隊制度活用のコツとは?

今回のセミナーでご紹介する事例「まるまるまるもりプロジェクト(以下、まるプロ)」において、プロデューサーを務めるMAKOTO WILL。

本セミナーでは、代表の菅野より、町と連携し協力隊をサポートする立場から見えてきた制度活用のポイントをご紹介しました。

菅野:「8月11日付けの日経新聞によると、なんと、協力隊の1/4が着任1年以内に退任するとの調査結果が出ているとの報道がありました。協力隊の定着を促進するために、マネージャー制度を2021年度に創設する動きがあるそうです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62498110R10C20A8CE0000/

しかし、今回私が皆さんに投げかけたいのは、「協力隊制度において”定着すること”だけが課題なのでしょうか?」ということ。

協力隊制度に限った話ではありませんが、人材の採用においては以下の4つのプロセスを連動させることが極めて重要です。

・目的設定

・採用

・定着

・活躍

これら4つを連動させて初めて、協力隊制度をうまく活用することができると考えています。それぞれ、ポイントをご紹介していきます。」

 

①目的設定

菅野:「自治体の皆さんと接する中で、よくこのような声をお聞きします。

目的設定があやふやだと、このように地域の自治体側と協力隊側のWin-Winの関係を築くことができません。

そこで確認いただきたいのが、下記4つの確認ポイント。

・協力隊制度活用の目的は明確ですか?

・手段が目的化していませんか?

・目的を達成するための目標は明確ですか?

・目的に対して一貫した制度を設計できていますか?

このとき、目的と目標を区別する必要があります。目的は「最終的なゴールや達成したいこと」を指し、目標は「目的のために達成すべきこと」を指します。

 

では、それを踏まえると具体的には何をすれば良いのでしょうか?

下記2点を考え、それぞれを具体的に言語化することが重要です。

①目的を改めて明確化すること

②目的から逆算した一貫した制度設計

 

つまり、「〜のために協力隊制度を活用します。目的設定のために〜の目標設定を行い、〜の施策を行っています。」と言える状態にしておくと良いでしょう。

弊社で担当した宮城県丸森町の事例「まるプロ」では、下記の通り目的を設定しました。」

 

②採用

菅野:「採用についても、こんな声をよくお聞きしています。

2018年時点で5,359名いるとされる地域おこし協力隊。

総務省によると、2024年までに約1.5倍の8,000名に拡充することが目標とされています。
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei08_02000146.html

今後も導入自治体が増加し、採用難易度が上がるため、採用方法に工夫が必要となってきます。

そこで皆さんに確認いただきたいポイントは、「逆算をする」ということ。

・ターゲットの具体的な人物像が明確になっていますか?

・ターゲットを引き付けるための環境はありますか?

・ターゲットに合わせた適切な集客手段、広報媒体を選択できていますか?

このように、具体的な人物像の設定と、それに適した打ち手を講じることが必要です。

 

ターゲットと施策の例として、「まるプロ」の例をご紹介します。

丸森町では、「20代のメガベンチャー勤務、将来は起業を検討」という、あえて尖ったターゲットを設定しました。このターゲットに刺さるコンテンツを検討し、自主企画説明会を仙台、東京で実施したところ、100名以上も集客することができました。

しかし、この説明会開催はコロナ禍以前の話。「コロナ禍で採用が難しくなるのでは?」とお考えの方も多いかもしれません。

そこで、もう一つの弊社の事例「宮城県七ヶ宿町の地域おこし協力隊」をご紹介します。

現在まさに採用真っ只中ですが、七ヶ宿町ではコロナに対応すべく説明会や現地ツアー、面接を全てオンラインで行っています
全国を対象にオンライン説明会を開催したところ、約20名の方にご参加いただくことができました。今度は、現地ツアーもオンラインで開催する予定です。
まだ採用活動の途中ではありますが、このコロナ禍においても、オンラインで採用活動ができること分かりました。地方に移住したい人は増えていますから、コロナ禍を逆手にとって活用してみてはいかがでしょうか?」

 

③定着〜活躍

菅野:「最後に定着から活躍について。これもよくお聞きする声です。

ここでも重要になるのが採用目的からの逆算をする」ということ。
繰り返しになりますが、着任後のサポート体制を含め、逆算しておくことが自治体と協力隊のすれ違いを防ぐために非常に重要です。

丸森町の事例「まるプロ」では、以下3つの定着支援に取り組んでいます。

①伴走支援体制の構築

②各専門分野のメンターの用意

③支援拠点の整備

①②に通ずる話ですが、弊社では起業型の協力隊にこだわっています

事実、総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」によると、「地方から人材が流出する要因」のトップとして「良質な雇用機会の不足(89.1%)」が挙げられています。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/h29_05_houkoku.pdf

その点、地方に起業家を誘致、育成するとどうでしょうか?

一昔前までは、工場や企業の誘致をすることによって雇用の増加、地域の活性化につなげる施策が一般的でした。しかし、現在の若者は雇用の場としてそれを求めていません。雇用の質をあげることが大切なのです。

そこで、起業家を誘致、育成することによって、時代に即したビジネスで良質な雇用の数を増やし、地域の活性化につなげることができると考えています。

また、③については、コワーキングスペースCULASTAを設置し、弊社スタッフが週3日常駐しています。

拠点整備はお金が必要になるので必須とは考えていませんが、「ここに行けば相談ができる」「ここに行けば仲間がいる」という拠点を作ると、協力隊の定住に有効だと感じています。」

 

質疑応答

参加者の皆さんから質問をいただきました。2つ抜粋してご紹介します。

Q.MAKOTO WILLさんは協力隊員とのかかわり方で大切にしていることはどんなことですか。具体的なことも教えていただけると有難いです。

菅野:「地域おこし協力隊は起業前の段階になりますので、起業家としての想いを明確にしたり、事業立ち上げ時の悩み事に寄り添うサポートを大事にしています。こちらが主導になるのではなく、あくまで”伴走”というスタイルです。また、弊社グループ会社のネットワークもありますので、マッチング支援をすることもよくあります。

 

Q.起業型地域おこし協力隊制度を丸森町に導入されてから3年経ち、初年度の方々が卒業される時期だと思うのですが、着任された方で実際に起業し独立経営できるようになった方は何人いらっしゃいますか?

菅野:「任期はあと少し残っていますが、今年卒業する隊員5名は、全員が独立経営をしています。その後定住するかどうかは事業の軌道によりますが、全員が自分で生計を立てられるようになってきています。」

 

まるプロ制度を活用し、起業した地域おこし協力隊 山下久美さん

続いて、実際に「まるプロ」の協力隊として丸森町で移住・起業した山下久美さんより、制度を利用し起業するまでの道のりなどについて伺いました。

山下さんは、町内の養蜂園で生産される地域資源「ミツロウ」を活用した「ミツロウラップ」を製造販売しています。

 

協力隊として起業までの道のり

山下さん:「もともとセラピストとして仕事をする中で、体の外からではなく、内からアプローチできないかと考え、独立を検討していました。その点、自然が豊かな丸森町はリラックス効果がありますし、リラクゼーションの視点からもとても良い環境でした。

仕事を辞めて独立することに、なかなか踏ん切りがつかない日々を過ごしていましたが、まるプロでは着任後の起業支援が手厚いことを知り、思い切って応募。選考に落ちたとしても、丸森で事業を行うことを宣言し、採用いただくことができました。

当初は、マッサージクリームの商品開発を検討していましたが、それではあまり収益化、地域への貢献ができないと思い、MAKOTO WILLのスタッフへビジネスモデルの相談をしました。

MAKOTO WILLでは2016年から丸森町と関わりがあり、町内の経営者とのネットワークがあります。そこで、「ミツロウが余っていて活用方法を模索している」と相談があった町内の養蜂園を紹介いただきました。

そこで、当初の方針とは異なりますが、環境にも人にも優しい「ミツロウラップ」を開発することになったのです。おかげさまで1年分のミツロウを半年間で収益化させ、休眠資源の活用につなげることができました。」

 

 

丸森町への移住のメリットとは?

山下さん:「丸森町に移住して約1年が経ちましたが、移住して感じたメリットは3つあります。

1つ目は、価値観が変わったこと。同じ日本なのかと思うくらいびっくりすることがありました。

これまで都市部に住んでいた私は、「お金を払ってサービスを受ける」ことが当たり前でした。しかし、2019年の台風19号で町の道路は破損。土砂崩れなどで大きな被害を受けました。そこで驚いたのは、住民の皆さんの力強さ。なんと、自分たちで所有している重機を駆使してあっという間に道路を直したのです。こういった非常事態に陥った時、お金があっても意味がないことや、自分たちで作ったり直したりできることの素晴らしさに気づき、価値観がガラリと変わりました。

2つ目は、情報が集まってくること。移住後は、「こういうことをやっている人がいるよ」とか、「使えそうな素材があるよ」などといった自分が欲しい情報が集まりやすいです。小さい町だからこその特徴だと思います。

3つ目は、事業に集中できる環境が整っていること。夜、遊びに行ったり飲みに行ったりする場所がないので、自然に節約になりますし、邪魔な誘惑がないので、事業に集中できる環境が整っています。おかげさまで非常に充実した生活を送ることができています。

 

 

質疑応答

メインスピーカーの菅野や、参加者の皆さんからいただいた質問にご回答いただきました。

Q.協力隊として移住起業してみて、役場やMAKOTO WILLの支援について、総合的な満足度はいかがでしょうか?

山下さん:「非常に満足しています。住民の方も優しいですし、役場やMAKOTO WILLも協力的です。自然に近い生活や仕事といった自分の想いも叶っていますし、今は人生の中でもとてもいい位置にいると感じています。」

 

Q.まるプロでは、協力隊同士のネットワークはありますか?

山下さん「それぞれの隊員が起業しているので、互いに悩みを相談したり、分かり合えたりする関係性を築けています。共通の知り合いが多いので、移住後でも孤立せず、話ができるととても気持ちが癒えますね。」

 

Q.協力隊として地域に移住しても地域住民の理解が得られず、結局地域を離れてしまう事例もあるというお話を伺ったことがあるのですが、そういった面でマコトウィルさんや町役場の方からのご支援はあったのでしょうか?

山下さん:「移住後、各地区の代表の住民の方にご挨拶に行ったのですが、役場の方が同行いただき、とても丁寧にサポートしてもらいました。「誰の知り合いか」という地元のコネクションを通じて紹介いただいたので、とてもスムーズに受け入れていただけました。」

 

Q.自治体職員に向けて、協力隊員の目線からの要望やアドバイスをお願いします。

山下さん:「私の場合、協力隊になる前から丸森町を訪問していましたが、その時に”丸森を愛している人”と出会ったことが移住起業のきっかけになっています。

「このお店はこれが美味しいんだよ」などと楽しそうに地域のことを話している姿を見て、自然と自分も丸森町に興味が湧きましたし、とても好きな場所になりました。

また、丸森町には「こんな人とつなげてもらえませんか?」などと気軽に役場に行って相談できる雰囲気がありました。

そのため、協力隊を採用する前に、協力隊と”地域を愛する人”と出会うこと、関係性を築くことが大切なのではないかと感じています。」

 

おわりに

いかがでしたか?

セミナー終了後に実施したアンケートでは、回答いただいた100%の参加者から「とても満足」「やや満足」とご回答いただきました。自治体職員の皆さまにとって、明日からの仕事に活かせるノウハウを提供できておりましたら幸いです。

ご参加いただいたみなさん、ゲストの山下さん、誠にありがとうございました!

 

次回案内

9月29日(火)、「これからの関係人口を考えよう。〜副業を通じた関係人口の作り方〜」 と題したオンラインセミナーを開催します。

7回目となる今回は、副業マッチングサービスを運営する株式会社シューマツワーカー様をゲストに迎え、「副業を通じた関係人口の作り方」について学びます。

✔︎ 関係人口創出の取り組みを模索している方

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にとって、ヒントや刺激をお届けする内容となっております。当てはまる方は、ぜひご参加ください!

イベントページはこちら
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