首長インタビュー第16弾は、青森県青森市の小野寺晃彦市長。

青森市では、まちの経済活性化のために、起業・創業やスタートアップに向けた支援に特に力を入れています。

小野寺市長に、上記支援に関する具体的な取り組みや、今後の展望についてお話を伺いました!

インタビュアー・執筆:佐藤桃子

東北大学経済学部在学中。
2018年2月にMAKOTOグループにインターンとして参画。地方自治体向け新規事業開発、広報等の業務に従事。

 

 

自治省時代の経験を活かし、市長に就任

 

ーー青森県出身の小野寺市長は、市長に就任する以前、自治省(現・総務省)に勤めていたそうです。どのようなきっかけで、青森市に戻り、市長に就任されたのでしょうか?

「自治省の職員時代に、地方自治体での勤務を経験させて頂きました。

最初の地方勤務地は福島県で、その後は宮崎県宮崎市と愛知県庁に管理職として赴任しました。

その中で、いわゆる”自治体マネジメント”についてのノウハウを得ることが出来ました。

ある時、青森駅前の『アウガ』という商業施設が経営破綻し、当時の青森市長が責任を取って辞職するという出来事が起こりました。

『次の青森市長には、この街を即戦力として立て直す人材が必要だ』ということで、関係者が様々な方々に立候補を打診する中、私にも声が掛かりました。

このような状況の中、自治省時代に積んだ自治体マネジメントの経験を見出して頂き、市長に就任させて頂きました。

就任してからも、紆余曲折ありましたが、24億円にも上る借金は半年で清算することが出来ました。」

 

歴史的土壌を活かし、起業・創業支援に取り組む

ーー小野寺市長が力を入れて取り組んでいることの1つに、起業・創業や、ベンチャー企業に向けた支援があります。

「市長に立候補した当時、地方創生に向けて『青森市ならではのアプローチは何だろう?』と考えました。

青森市の歴史を紐解くと、青森市は津軽藩の港町であり、商業の町として発展してきました。

このような歴史的土壌を活かし、新しい商売を起こして経済を活性化させることが、青森市の地方創生に向けたアプローチではないか、と思うようになりました。

地方創生とは、『ないもの探しではなく、あるもの探し』ともよく言われます。

青森市にとっては、新ビジネスの創造や起業・創業の促進、ベンチャー企業支援による街おこしをすることが、歴史的に見ても、地方創生に対する十分納得できる解であると考えました。

『起業』や『新ビジネス』といった、革新的なものに、抵抗を感じる方がいるのも事実です。

しかし、”歴史から紐解く”というのが大事なポイント『青森市は、昔から津軽藩の港町で商都なのだから、新しいビジネスを応援するのは当然ですよね』と背景までしっかり説明すると、皆さん共感してくださいます

起業家の成長を加速させる「AOMORI STARTUP CENTER」をオープン

ーー青森市は、青森商工会議所と連携して、市内の創業、ベンチャー支援を一挙に担う「AOMORI STARTUP CENTER」を2018年7月にオープンしました。

「これまで起業家の皆さんが相談できる施設は、商店街の奥の方にありました。

『AOMORI STARTUP CENTER』は、駅前に立地すると同時に、市民の皆さんが自由にミーティングや共同作業をしたり、センター全体を使ってイベントやセミナーを開催したりできるようにするなど、オープンな雰囲気作りに努めています

その甲斐もあってか、以前の施設であった時と比べて、相談件数は1.5倍になりました。

また、既に活躍している起業家の方をお招きして、『スタートアップ支援セミナーあお★(スタ)』というイベントを定期的に開催しています。

昨年度は約600名、今年度は10月時点で300名以上の方に、このセミナーに参加いただきました。

参加者からは『既に成功されている起業家の方との交わりを持つことができ、非常に刺激を受けている』といった声を頂いています。」

 

起業家支援の土壌づくりから、急成長事業の支援へ

ーー「AOMORI STARTUP CENTER」オープンから1年余りが経ちましたが、日々新しい取り組みも行っているそうです。
ーー今年度新たに開始したピッチイベントや、起業・創業の展望についてお聞きしました。

「今年度、特に力を入れて取り組んでいるのは『あお★スタピッチ交流会』です。

来年1月に東京都内で開催する、地域の起業家と首都圏の大手企業・投資家とのマッチングを支援するイベント『ジャパン・スタートアップ・セレクション』に、青森市代表として参加する企業3社を選定するためのピッチイベントです。

昨年度は『青森市学生ビジネスアイデアコンテスト』という学生版のピッチコンテストを開催し、チャレンジする人を応援する機運の醸成や、起業に興味のある方への刺激作りを行ってきました。

ようやく土壌が整ってきたので、今年度からは、市内企業の資金調達や事業成長に市としてコミットしようということで、『あお★スタピッチ交流会』の開催を決めました。

現在は飲食店や美容系のいわゆるスモールビジネスが中心ですが、今後はテック系や、医療バイオ系、大学発ベンチャーといった、急成長が見込まれる企業が増えるよう取り組みを徐々に拡大していきたいです。」

夢を乗せた大旗を振り、市民のモチベーションを高める

自治省職員としても自治体マネジメントの経験がある小野寺市長。市長が考える、首長のリーダーシップとはどのようなものでしょうか?

「日本全国の自治体は全て競争関係にあり、どこの自治体も”人口を戻したい、若い人を残したい、もっと多くの人に来てもらいたい”という思いを持っています。

ですので、しっかり戦略を立てて施策を打っていかないと、他の自治体から取り残されてしまいます。

このような状況の中、職員や市民の皆さんのモチベーションを高めるために、皆が前向きになれるような夢を乗せた大旗を振ることが首長の重要な役割だと考えています。

やはり、ある程度夢がないと楽しくないですよね。

また、東北の方は、控え目で自己PRをあまりしないのを良しとする様な風潮があります。

それは東北全体として、変えていかなければならない部分だと私は思っています。

『冬は薄ら暗いし、青森市には何もない』と言うだけでは何も起きません。

しかし、雪を見に来る外国人観光客の方も大勢いますから、その方々に向かって青森の良い部分や、良いものをどんどん売り出していく。

そんなメンタリティを市民の皆さんの中に醸成していくことも、首長として取り組んでいきたいです。」

“市民一人ひとりが挑戦する街”へ

最後に、今後の意気込みについて伺いました。

「青森市の総合計画のタイトルは”市民一人ひとりが挑戦する街”です。

ビジネスだけではなく、教育や福祉の面でも新しいことに挑戦する土壌を作っていきたいです。

市民の皆さん自身も、対外的にも、『青森市の方は皆、新しいことに挑戦しようとしているし、実際に挑戦しているよね』と思って頂けるように、ブランディングや情報発信を行っていきたいです。」

攻めの起業・創業支援を進める青森市。

その背景には、小野寺市長の前例にとらわれないチャレンジ精神が大きく寄与していると感じました。

貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

 

 

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