今回の首長インタビューは、大郷町の田中学町長。

2019年から新たに始まった大郷町の公民連携施策について、詳しくお話を伺いました!

思い描く政策実現のため、果敢にチャレンジ

 

町長就任以前は、大郷町議員を務めていた田中町長。

1996年当時の鈴木元町長は、”「農村」「都市」「人」が共生する田園都市づくり”を進めようとしており、議員として、この政策に魅力を強く感じていました。

「鈴木元町長が病気のために辞任することになった際に、『この政策をぜひ継承したい』と思い、大郷町長に立候補を決めました。

1996年の町長選で初当選後、2008年までの3期12年の間、丘陵地や放牧地を活用した農業体験も出来る宿泊施設「縁の郷」や、乗馬クラブ、羊牧場を民間事業者の力を借りながら、整備しました。

しかし、4選を目指して挑んだ町長選で落選してしまいました。

町長を退任してから、人口がどんどん減る、高齢化は進む、大郷町で育った若い人たちがよそに出ていく…という町の状況を客観的に見てきました。

退任してから8年間のブランクはありましたが、『このままではダメだ』、『人口減少時代における地方の一発逆転を考えないといけないのではないか』と思い、2017年の町長選に再び立候補し、町長に復帰しました。」

 

公民連携の加速を目指す、地方創生推進連携協議会の設立

 

町づくりにおいて、田中町長が重視しているのは「公民連携」

今年の5月には、町内外の民間企業等とタッグを組み、地域課題の解決を目指す「地方創生推進連携協議会」の設置に踏み切りました

設置の背景には、人口減少、少子高齢化、行財政の基盤づくりといった、地方自治体を取り巻く課題があると語ります。

「これらの課題を克服するためには、民間活力を積極的に導入し、彼らのノウハウやネットワークを活かしながら、町の可能性を引き出さなければなりません。

しかし、これまで民間企業が新しいことを始めようと思ったら、ぶつかった課題ごとに庁舎内の課を周らなければならず、目的を達成するまで長い時間がかかっていました。

課題が山積する時代においては、地方分権、権限移譲の範囲をどこまで広げられるかが自治体に問われていると考えています。

そのため、民間との取り組みを部門横断的に推進することを目的に、”公民連携室”という部署を新たに設置し、専属の職員を配置しました。

町が後ろ盾となり、スピード感をもって事業活動を行うことが出来るので、民間企業にとっても大いにメリットがある取り組みだと考えています。」

 

地方創生推進連携協議会には、井ヶ田製茶㈱やスモリ工業㈱といった企業の他、仙台大学と明成高校を運営する学校法人朴沢学園も名を連ねています。

協議会設置後まもなく、明成高校調理科の生徒が大郷町内の田畑で農業体験を行ったそうです。

「自分たちで種まきから収穫まで実施して、調理も行う。

このような体験を生徒たちにさせたいと、学校側は以前から考えていたそうです。

町内には『開発センター』という食品開発に使用できる施設もあるので、この施設も活用しながら高校生が考えた商品を道の駅で売るという構想もあります。

現在、商品化に向けて注力しているのが、宮城県名物の『ずんだ』です。

実は、県内のずんだは輸入物がほとんどだそうです。

”大郷産ずんだ”を開発してブランド化しようと、学校と共に一生懸命取り組んでいます。」

日本初・職住一体の人口減対策

 

この夏、大郷町への移住・定住促進を目的に、秋田市のリネシス株式会社と包括連携協定を結び、「譲渡型賃貸住宅」の提供を開始しました。

「譲渡型賃貸住宅」とは、賃貸契約を結んだ新築戸建て住宅に対して、一定の期間賃料を払い続けると、その住宅が入居者の持ち物になるという制度のこと。

また、2018年には2社の大規模農業法人を誘致し、約200人の雇用を新たに生み出す見込みです。
田中町長は、「これから譲渡型賃貸住宅の提供と、農業法人の従業員確保をセットで行っていく」と、力強く語ります。

つまり、”大郷町に移住すれば、マイホームも職も手に入る”という、職住一体の移住・定住促進施策で、日本で他に例を見ない施策であるそうです。

この施策は、若い子育て世代や、一般的にマイホームを持ちづらいとされている方々に特に焦点を当てています。

「マイホームを我慢して、賃貸住宅に長年家賃を払い続けるご家庭が山ほど存在します。

また、非正規雇用者や、ひとり親世帯が増加していますが、このような方々は一般的にローン審査が通りにくいと言われています。

しかし、この制度を利用すれば、アパートに家賃を払うのと同様の、手続きと金銭的負担でマイホームが手に入るのです。

この制度は、”家を建てるためには一生懸命働いて貯金をしなければならない”という考えをもくつがえし、無理なく、楽しい暮らしを営む助けになりえると考えています。

これと同時に、大郷町は子育て世代に優しい施策も盛りだくさんです。

例えば、幼稚園から中学校までの学校給食費が完全無料ですし、医療費も18歳まで無料です。

加えて、学校で使用する運動着も無償で支給しています。

上述した職住を一体で提供する施策と、子育て支援の手厚さを掛け合わせて、子育て世代の定住先に大郷町を選んでいただけるよう、PRしていければと考えています。」

 

自治体と共に地方から日本をおもしろく